銀魂

□I'm crazy for you
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「総悟くん、仕事お疲れ様。
今日もお弁当を作ってきたんだ。」
九ちゃんは俺に微笑みかけて重箱をとりだした。
何度も言ってるけど屯所には来るな、そう言うつもりだったのに九ちゃんの笑顔を見るとそんなこと言う気はなくなる。
「いつもいつも悪ィですねィ。」
俺は重箱を受け取ると九ちゃんの向かいに座る。
まだ昼休憩にはちょっと早いけど、今日は土方のヤローがいないからまぁいいや。
俺はそう思って重箱のふたを開ける。
中には美味そうなおかずや彩り綺麗なおにぎりが詰まっていた。
九ちゃんはいつも、昼時にこうして俺に弁当を届けにきてくれる。
九ちゃんの親友である姐さんは料理の腕は壊滅的で、作るものといえばダークマターだが、九ちゃんはきちんと料理が出来る。
ダークマターなんて作らないから、安心だ。
「九ちゃんはメシ食ってきたんですかィ?」
「ううん、まだだ。」
「うめェから、九ちゃんも食べなせェ。」
そう言って九ちゃんに卵焼きを掴んだ箸を差し出すと、九ちゃんはそれを食べた。
「九ちゃんはなんで自分の分はつくってこねェんですかィ?」
「作ってきてないわけじゃないよ。」
そういうと九ちゃんは卓の下からでかい重箱を取り出してきた。
「ただ、一番隊の人たちの分も作ってきたら、ちょっと量が足りなくなってしまっただけだ。」
その言葉にやっぱりそうかと思って、俺は九ちゃんに分からないように小さなため息を吐く。
九ちゃんは俺の恋人で、だから九ちゃんはこうして俺に弁当を作ってきてくれる。
そして、一番隊隊長の俺の恋人だから、一番隊のやつらにも気をつかって弁当を作ってきて一緒に持ってくる。
俺は、それが気にいらねェ。
九ちゃんの手料理をなんで一番隊の隊士だってだけであいつらが食えるのか分からない。
九ちゃんは、俺のためにそうしてくれる。
それだけじゃない、仕事で疲れた俺のためにとか言って、マッサージを習いに行ったらしい。
俺にマッサージして疲れを取ってもらうためだそうだ。
俺と一緒に歩くときに俺が恥をかかないようにと女物の着物来て、化粧して、かわいく髪を結っている。
そうしていつも笑顔で俺に接してくれる。
クリスマスの日に急な仕事で待ち合わせに三時間も遅れてしかも連絡も出来なかった時だって、俺をひたすら待ち続けて文句も言わなかった。
「仕事で大変だったのに急いできてくれてありがとう。」
九ちゃんはそう言って、 寒さで真っ白になった顔で微笑んだ。
指先は冷え切ってるなんてもんじゃなく、固まってた。
それなのに俺に笑いかけてくれた。
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