銀魂

□誰にもお前を渡さないSide九兵衛
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「お兄さんですか、俺が九兵衛さんの担任の桂小太郎です。」

桂先生の言葉にお兄ちゃんも

「いつも妹がお世話になってます。
俺が九兵衛の兄です。」

と頭を下げた。


お兄ちゃんは結局休みは取れなくて、午前中は仕事に行ってそのまま学校に来た。
午後は休みをもらったとは言ってたけど。

「ええと、彼女の志望大学はどこかの女子大学と聞いていますが、それでいいんでしょうか?
具体的な学校名や学部名はまだ決まってないとの事なんですが…。」

先生がお兄ちゃんにそう聞く。

「そうです。
妹の今の成績ならそれなりの所にいけると思うんですが、出来たら家の近くでいいところとかないですか?」

「女子大と限定せず、まずは自分の将来やりたい仕事ですとかやりたいことを考えて、そこから進路を決めていったほうがいいと思います。
妹さんの今の成績なら、国立大でも十分狙えますよ。」

先生の言葉にお兄ちゃんは笑った。
「女子大でいいんです。
そう育ててしまった俺のせいではありますが、妹は世間知らずなところがありますから。」

「そうですか…。
まぁ、この辺りの大学となるとそんなにレベルが高いわけではないので、女子大で九兵衛さんの成績にあわせた大学を選ぶなら自宅から通うとは決めずに下宿することも視野に入れて…」

「世間知らずですから、一人暮らしなどさせられません。」
お兄ちゃんのきっぱりとした言い方に先生は黙り込んでしまった。

「先生すみません。
もう少し、色々調べて兄とも話してから志望大学を決めます。
二年生だからまだ大丈夫かなって甘く見て志望大学も決めてなかったのが悪かったと思います。」
僕はあわててフォローする。

「そうだな、その方がいいと思う。
九兵衛の希望進路は曖昧過ぎるんだ。
何がやりたいかとか、どうなりたいかとか、そんな具体的なビジョンがないと俺も進路指導が出来ない。」

「すみません。」
僕が思わず謝ると先生が笑った。
「気にするな。
それが俺の仕事だ。」

「桂先生は、妹の事を名前呼び捨てで呼ぶんですか?」

お兄ちゃんの声が先生には分からないけど、僕には分かる程度のごくわずかな怒りを含んだものになる。

「お兄ちゃん、桂先生は剣道部の顧問で、剣道部の部員のことはみんな呼び捨てにするよ。」
僕は慌ててお兄ちゃんのスーツの袖を引く。

「そうか。」
お兄ちゃんはそれ以上は何も言わなかった。
その後、桂先生がいくつか僕の普段の学校での様子を話して、面談は終わった。
僕とお兄ちゃんは先生に礼をしてから教室を後にした。

「今日はどっか外で夜メシ食うか。
せっかく午後は休み取れたんだし、二人でゆっくりどこかに出かけるのもいいだろ。」
「スーツと制服で?」
「いったん家に帰って着替えてから…」

お兄ちゃんが急に足を止めたので僕は訝しく思ってお兄ちゃんの視線の先をみた。

「土方くん…」

そこにいたのは土方くんだった。
土方くんは何でか分からないけどお兄ちゃんをまっすぐに睨みつけてた。
お兄ちゃんも土方くんを睨みつけてる。

「こんにちは、お久しぶりです、お兄さん。」
土方くんはお兄ちゃんの前に立つとそう言って頭を下げた。

「俺、弟なんかいねぇんだけど?」
お兄ちゃんの言葉に土方くんは
「いずれ、弟になりますよ。
彼女と俺が結婚すれば、俺はあなたの義理の弟になるんですから。」
と笑った。

「土方くん…何を…」

「俺は、お前を諦める気はねぇからな。
お前が好きだって言った俺の気持ちは変わらねぇから。」
土方くんはそう言うとお兄ちゃんに頭を下げて歩いていった。

僕は怖くてお兄ちゃんの顔を見ることが出来なかった。
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