銀魂

□商社・真選組2
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土方はボーイを呼んで、九兵衛を指名したいと告げた。

九兵衛はすぐに二人の席に戻ってきた。
「えと、なんか指名を頂いたって聞いたんですけど…?」
半信半疑で二人に尋ねてくる九兵衛に
「俺も九ちゃんのことは昔から知ってるし、総悟のことも知ってるし、今は総悟の上司だからね。
他の男に接客してるところを見てるよりは指名したほうがいいかなと思って。」
と近藤が答える。

「そうですか、すみません。」
目を伏せた九兵衛に土方は
「あんたは何か飲みたいものあるか?」
と聞いた。

「九ちゃん、バナナ好きだったよね。
フルーツ盛りでも頼もうか?」
近藤の言葉に土方は彼女はバナナが好きなのか、一つ彼女のことを知ることができたと内心で思った。

結局土方は、九兵衛のためにオレンジジュースとフルーツ盛りを頼んだ。

総悟に弁当を届けにきて道に迷い、会社に案内したときにも思ったが、九兵衛と話をしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。
人の話を聞くのがうまいし、自分の話をする時も押し付けがましくない。
一時間だけのつもりだったが、近藤と土方は九兵衛が帰る十時まで延長してしまった。

「まだ雨降ってるし、タクシー呼んでくれ。
九ちゃんももう帰るんだろう、送っていくよ。」
近藤の言葉に九兵衛は
「お店の送迎がありますから。」
と一度は断ったが、
「いや、そういうわけに行かないよ。」
と近藤がニコニコ笑っているので結局は断りきれずに三人は一緒に帰ることになった。


方向は奇跡的に全員が一緒で、近藤が一番最初に降りることになる。

近藤はタクシーを降りると土方に財布から抜いた一万円を渡した。
「トシ、ちゃんと送ってやってくれよ。
あと九ちゃん、できるだけ早く今のバイトはやめてね。」
「すみません。」
小さな声でそういう九兵衛に手を振って、近藤は自分のマンションに入っていく。

ドアが閉まって、土方は九兵衛と二人になった。

お店で着ていた衣装は店で借りたものらしく、今九兵衛が来ているのははじめてあったときのような、タイトなラインのワンピースだった。

雨が降ってるせいか、初夏だというのに体感温度は寒い。

九兵衛が自分の腕をさすっているのをみて、土方はスーツの上着を脱ぐと九兵衛の肩にかけた。
一瞬だけ触れた九兵衛の肩は細かった。

「あ、すみません。
どうもありがとうございます。」
土方を見上げて九兵衛が微笑む。

その微笑に心臓をわしづかみにされた気がする。

この子は総悟の嫁、俺にとっては妹みたいなもんだ。
そう自分に言い聞かせながら土方は気にすんなとぶっきらぼうに返した。

END
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