Deus Sanguis .

□1話
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 かつてー
 神の時代があり
 天使の時代があり
 悪魔の時代があったー

 神は人々を生み出し、
 天使は正義を
 悪魔はこの世に悪を生んだ


 ー神界ー

暗く一つの青白い光の周りに
三人の人がいる。
特徴や姿は良く見えないものの
声だけは響き渡る。
一人は幼そうな女の子、
後の二人は少年くらいだろうか
「…私が行きましょうか?」
「いや、構わない」
そう言って、一人の少年は
心なしかもう一人の少年を
ちらっと見た気がした。
「あーぁ、人使い荒いなぁ…。
ま、楽しみだからいっか。」
何かを察したのか、
一人の少年はその場から
いなくなってしまう。
残された二人も煙のように
消えて行った。


 ー天界―

青く広い空の雲とは違う、
曇り空のような雲に建ててある
鏡が置いてある広場。
そこに大きな翼を持った青年と
急いで走ってくる、
黒い翼と白い翼を持った男女が
やって来た。
「す、すみません!大天使様!
ユーグを探すのに
時間が掛かってしまいました!」
白い翼を持った女の子が
ペコペコと頭を下げ、
平謝りをしているが、その反面
黒い翼を持った男の子は
反省の顔もせずに大天使様、
という人に舌を出している。
「ふふ、ユーグ君らしいね。
リィネもお疲れ様。」
軽く笑うと大天使は、
真剣な眼差しで鏡を覗き込んだ。
それにつられるように
二人も鏡を覗き込むようにした。
「なに、これ?人間界?
なんで人間界なんか見てんの?」
「こら!ユーグ!
大天使様にそんな言葉遣い…」
リィネの言葉を遮るように
ユーグはリィネを小突いた。
相当、痛かったのかリィネは
おでこを抑え痛みを堪えている。
大天使様はこらこら、とだけ
注意しながらリィネとユーグの
頭を撫でるとまた、
鏡を見ながら話出した。
「今回も…また始まるようです。
残念ながら止める方法は
ほぼ、ないでしょう。
私が言いたい事分かりますね?」
大天使はリィネとユーグの方に
向き直ると、優しげな笑顔と
真剣な顔でなんともいえない
表情をしている。
リィネは笑顔で、
ユーグはめんどくさそうに
頷くと空へと飛び立っていった。


 ー魔界ー

何やら怪しげな儀式の最中に
暗黒のマフラーをした少年は、
意地悪そうな女の子と、
何も表情を見せない女の子を
王座の部屋に招き入れた。
「お、来たな来たな。
来るのが遅い!
待ちくたびれたぞ…」
ポリポリと少年は頭をかき、
王座から立ち上がる。
「も〜!なんなんですか、
殿下が急に呼び出すから
儀式が中断しちゃったじゃ
ないですか〜!」
「…うるさいわよ、プラム。
ガゼル様、例の奴ですか?」
ポコポコと怒りながらも
しっかり話を聞くプラムと、
自信満々な顔をしたガゼル。
「ザクロは話が早いな…
どこでそんな情報を
仕入れるんだか…。
まぁ、いい。話は早い方がいい
そうゆう事だ。天使共も
動き始めたからな。
じゃあ頼んだぞ、ザクロ」
そう言うなりガゼルは
どう出したかも分からない
ゲートの中に消えていった。
ザクロは消えたのを確認すると
立ち上がり、ゲートを
作り出す。
「どこに行くのよ?」
プラムは興味津々に聞くも
ザクロが何食わぬ顔で
「人間界」とだけ言うと、
プラムの首ねっこを掴み
ゲートへと投げ入れた。





夜の屋上、上を見れば天
下を見れば地、いや"死"か
「おい、早く飛び降りろよ。」
「それともなんだぁ?
怖くて動けないのかなぁ〜?」
細い男の子と、太い男の子は
一人の少年を屋上から
飛び降りさせようとドカドカ
腹の辺りを蹴ってくる。
手は縛られているため、
抵抗しようにも出来ない。
だが、少年は揺るぐ事のない
赤い瞳をしていた。
その瞳に恐怖を感じたのか、
二人の少年は蹴る力を増し
太い少年が思いっきり蹴りを
一発入れた。
少年は、なにも言わず
屋上から落ちていく。
途中で、拘束さろていた紐が
解け手に自由がおとずれると、
落ちていく中、ベランダがある
部屋があったのを目にした。
「…っ」
思い切って、少年は
ベランダへと飛び乗るように
滑り込んだ。
なんとか無事に足をついたが
目の前には、一人の少年が
笑顔で待ち受けていた。
「やぁ、アレイ君だよね?
すごい運動神経だね。
まさか落ちても、
持ち直すなんてね。
もはや、人間業ではない」
少年は感心しているようだが、
アレイはよろつきながらも
少年に警戒している。
それは、もちろん
腰につけている大剣のせいだ。
普通の人間なら、
そんなものは手に入らない。
「大丈夫だよ、今ここで
剣を抜いちゃったら、
怒られちゃうからね〜…。
さて、と。アレイ君には
悪いけどついて来てもらうよ」
ニコッとだけ笑うと、
アレイの手を掴もうとした。
が、アレイはその手を
払いのけるように叩いた。
「…触んなっ!」
予想外の行動だったのか、
少年は少し驚いていた。
「以外と警戒心強いんだね。
僕、そんなに怖い?」
少年が尋ねてみるものの
アレイは堅く口を閉ざしていた。
と、そこにガン!と
ドアを蹴飛ばして誰かが
入って来た。
「よぅ、ミラノ。
名前も名乗らないとは
相変わらずだな。」
「ユーグ!また…!
ドアは蹴るものじゃないですよ!
何度言えば分かるのですか!」
月の光が差し込み、
ようやく姿が見えはじめた。
そこにいたのは、ニヤっと
笑っているユーグと
申し訳なさそうに飛ばされた
ドアを拾い上げるリィネがいた。
「……(仲間…?)」
アレイが一人で状況を
飲み込もうと黙って、
様子を見ていた。
ミラノはアレイの顔を見ると
ニコッと意味のない笑顔を見せた
「半分正解で、半分間違いかな。
名乗り遅れちゃったね、
ミラノ・ウィズロウです。」
アレイの心を読み上げたように
そう答えると、一礼をして
名前を述べた。そして、また
ユーグの方へ向き直る。
「君達も、僕と同じ感じかな?
ということは…」
ミラノが誰もいない壁側の
方に顔をやると、
偶然なのか、分かっていたのか
黒いゲートが現れた。
「やっと見つけました。
…私達が最後のようですね。」
ザクロがそう言いながら
プラムを引っ張り出してきた。
「は、離してって!
話なら分かったから!
アレイって奴を
連れてくればいいんでしょ!?」
プラムのその一言で
辺りはしん、と静まり返った。
「…俺、を……?」
ただ、一人アレイだけは
目を開き驚きを隠せないでいる。
「…プラム?言葉は慎め、と
あれほど言いましたよね…?」
そう言うとザクロは
プラムに銃口を向けた。
「う、うにゃ…!?
ごめんって!」
この状況で、アレイが
恐る恐る口を開けた。
「……なんで俺を探してるんだ?
他の奴らも、そうなんだろ」
全員がアレイの方に向くと
ミラノがクスクスと笑って
話を始めた。
「そうだね、じゃあ話とこうかな
皆も同じ理由でしょ?
まぁ、皆騙されてるんだけどね」
その言葉を聞き、ユーグが
居てもたってもいられず
荒れたような様子を見せる。
「おい、騙されてるって
どいゆう事だよ?
騙してんのはそっちだろ?
悪魔と手、組んでるってよ。」
ミラノは「へぇ…」とだけ
言い返すとアレイに話をする。
「とりあえず、神界の話だけを
させてもらうね。
天界と魔界の話は
リィネちゃんと、
ザクロちゃんから聞いてね?」
ミラノがリィネとザクロを
見ると、二人とも頷き納得した。
そして、ミラノがまた
話を始め出した。
「じゃあ、神界から話すね。
神界は世界で始めに出来た
世界なんだよ。
人々を生み出したのも、
僕達のご先祖様。
"ビート・クライナー"
ねぇ、アレイ君。
クライナーさんには一人だけ
息子がいたんだよ。
その子は強力な力を
持ちすぎて殺される運命だった
でも、クライナーさんが
それを許すわけなくてね…
その子は一時的に力を
封印されて人間界に
堕とされてしまった。
そして、その子は
僕達の目の前にいる。
アレイ・クライナー君
君だよ…。」
優しい笑顔を一度向けて、
また話を始めていく。
アレイはいきなり真実を
突き付けられ唖然としていた。
「ここからは皆に関係ある話。
ついこの間、
神でも天使でも悪魔でもない
何かも分からない偉い人が
やって来たんだ。
僕達、神界に告げられた
言葉はこうだよ。
"悪魔が取り返しのつかない事を
天使はそれに協力する。
お前達に勝ち目はない
だから、クライナーの息子を
味方につけろ"とね。
それって、おかしくない?
僕達、神は争いは嫌いだし
ミトとガゼルが
手を組むっていう時点で
嘘だと分かったよ。
神界については調べ不足、
だったんだろうね。
ロゼ君から天界にも魔界にも
変なガセ情報を与えてる、と
聞いたからね。
ミトは誰でも信じちゃうし、
ガゼルは仲間から聞いた事なら
仲間思いだから
信じざるをえないよね?
僕の話はここまで。」
ふぅ、と一息つくと、
ミラノは壁にもたれ掛かる。
アレイはようやく落ち着いたのか
真剣に話を聞いていた。
「では、次は天界ですね
先程の話ですが、
ミラノさんの言うとおり
鏡に写ってきました。
確か…あれは、私とユーグが
怒られていた時でしたね。
文字が浮かび上がってきました
"神と悪魔が手を取り合い
天界を責めてくる。
しまいには世界を壊す
それを防ぐには人間界の
アレイを探せ"と
最初は大天使様も私達も
信じてなかったです。
ですが、次の日に
その映像が流れて来たのです
あの鏡は真実しか
写さないと言われています。
その時点で私達は
信じ込んでしまいました。
これが天界での出来事です。
まさか、嘘だったなんて…」
ふむぅ、と考え込んだリィネとは
違いユーグは納得してない
顔をしている。
それも気にせずザクロが
一歩前に出てきた。
「…魔界の話ですか…。
そうですね、私達の方は
プラムと会議してた頃に
奴隷が来てですね…
手紙を渡されました。
内容は確か…
"三日後、神と天使が
責めにいく
こちらはアレイ・クライナーを
味方にした。
抵抗しても無駄だ。"
だったと思います。
字も紙の性質も神界の物だと
分かりました。
そりゃあ、ガゼル様に
報告いたしました。
そこで出た作戦はアレイを
殺す、か味方にするでした。
ですが、おかしいです。
私と天使共は嘘だと
分かりませんでしたから
彼を追うのは当たり前です。
じゃあ、なぜミラノ氏は
嘘だと分かりながらここに?」
ザクロはミラノを疑うように
じぃっと見つめた。
それに気づくと、ミラノは
軽く笑っていた。
「やだなぁ、僕はただ
ロゼ君が行けって言ったから
来ただけだよ。
嘘だってことも教えないと
いけなかったからね。」

 

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