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□第3話 べ、別にお前のためじゃないんだからな!
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「でもオレも一人だったら絶対無理だな。今はまぁ、マックスがいるからいいけど」
「じゃあ僕が、ちょっとトイレ行って来るって言ったら?」
「なにそれ」
「例えばの話だって」
「えー…じゃあマックスの名前叫ぶ」
「それはやめてこっちが恥ずかしい」
「オレだって一人でいるとか嫌だよ!マックスといたいよ」
「何それ告白?」
「は?ちっげーしバカッ!」
「あっれ〜真一顔赤いよ〜」
「べ、べべ別に照れてねーし!」
「素直になりな、楽だよ」
「なにがだよッ!もういい加減からかうな!」
「ごめんごめん。反応が面白くってつい」
「ったく…」
マックスいわく、オレは反応が面白くからかいがいがあるらしい。こいつは人をからかうことが好きだが、相手を傷つけるまではいかないのでまだ可愛げがある。
少しずつだが人数も減ってきた。もう少しで目的のケーキを買うことが出来そうだ。
「ん?あ、ねぇ真一あれって君ん家の隣に住んでるお兄さんじゃない?」
「えっ」
マックスが指差した方向を見る。あれはまさしく幸次郎さんだ。
ちなみに幸次郎さんとはマックスが言った通り、お隣りさん家の長男。優しくてかっこよくて頼りになる、実はオレの理想の男性像だったりする。
「声かけようよ」
「なんで?!」
「え、なんとなく」
マックスはオレの意見も聞かず、遠慮などもせず、帰宅途中であろう幸次郎さんに声をかけた。
それに気づいた幸次郎はなんとも爽やかな笑顔でオレ達の元へとやって来る。
「こんにちは、お前達もケーキを買いに?」
「もってことは、もしかしてお兄さんも?」
「あぁ、ちょっと頼まれてな」
「へぇ〜だってさ、真一」
「はぁ?!な、なんでオレに振るんだよ」
「え、いやぁ気になってたかなって」
「べ、別に気になってなんかない!」
「あれ、そう?なんかすみませんねお兄さん。真一ご機嫌ななめみたいで」
「そうなのか?悩み事ならいつでも相談しろよ、俺で良ければ聞いてやるから」
「だってさ。優しいですねぇ〜」
「…別に悩んでないんで大丈夫です」
「あーもう素直じゃないなぁ。えっとお兄さん、引き止めてすみませんでした」
「いや気にするな、それじゃあまたな」
どうしてだろう。どうしていつもあんな態度を取ってしまうんだろう。
幸次郎さんは優しく接してくれたのに、理想の人なのに。オレ本当に最低だ。
「どうしたの真一、なんか変だったよ?」
「うん。もう…幸次郎さんに謝りたい」
「なんだ自覚はしてたんだ〜って…ん?」
「なんだよ」
「あれ?真一ってそういう属性だっけ」
「属性?」
「うん。ツンデレ」
ツンデレ?ツンデレってなんだ?
いや、ちょっと待て。なんだか聞いたことがあるような気がするが残念ながら何も思い出せない。
きっとそこまで重要な内容ではなかったのだろう。
「次のお客様どうぞ!いらっしゃいませ〜」
オレの夏休み明け初日は親友の付き添い。しかもケーキを買うため行列に並ぶというなんとも平和な一日。
失敗もあったけどついでに買ったケーキが思った以上に美味しかったので、今日のマイナス点はスッキリ忘れ去ってまた明日から頑張ろうと思うことにした。
続く!
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