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□第2話 最強で最悪
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せっかく立ち上がった行為が無駄になったのでソファーに再び腰掛ける。
つまらないので目はテレビに、耳は玄関へと向けてみた。

オレを止めたということはその相手はアネキの知り合いか何かだろうか。
となるとその場を動こうとしなかったのも相手を待っていたからで…
ちょっと待て、こうなってくるとその相手はアネキの彼氏なのか?

オレはいっそう聞き耳を立てた。
それとなく聞こえてくるのは〜だとか会話の語尾。
主語が分からなければ会話の内容もまったく想像がつかないものだ。





それから数分してアネキはリビングに戻ってきた。
心なしか不機嫌さが増しているような気がする。
彼氏とけんかでもしたのか、嫌いな相手だったのか。
そんなところだろう。
でもオレは気にならないこともないのでアネキに聞いてみた。


「相手、誰だったわけ?」
「…何で聞くんだよ」
「もしかして彼氏?」


そうしたらまた睨まれたから仕返し程度に少し茶化したらものすごく嫌な顔をされた。
予想していたのは照れたりそんな態度を取るアネキだったのだけれど、これは違ったようだ。
相手は一体誰なんだ。


「あ、違うのか。じゃあ男?女?」
「…男だよ」


だったら何だよ、とか言われたけど質問に答えた方がオレにとっては不思議だった。
さっきの質問には答えなかったくせに。
というかやっぱり男なんじゃんか、だったら彼氏だろ。

ついにアネキにも彼氏ができたのか。
それはようござんした。
でもなんだろう、友達とかそういう奴らのは素直に祝ってやれるけど家族だとちょっと違ってくる。
オレの将来に関わってくるものだからな。



「身内のそういう話はちょっと…」

「別にお前には関係ないだろ!」

「そうですけど〜…」

「だったらイチイチ突っ掛かってくるな!」



キレた、ついにアネキがキレた。
キレたアネキはコップを手に取り麦茶を勢いよく注ぎ込んだ。
それを一気にがぶ飲み。
そして呆気に取られたオレに近づくと思いっきり頭をぶっ叩いた。



「いってえ…!」
「いいか良く聞けこの馬鹿!あいつは彼氏でも何でもないただのうざったい後輩だ!」



今まで溜め込んでいたものを吐き出したアネキはすっきりした顔で自分の部屋へと戻って行った。

彼氏って言われたのがそんなに嫌だったのだろうか。
だからといって別にオレに当たらなくたっていいだろう、なんて最低なんだ。
おまけに怒ると本当に恐いから逆らえないし困ったもんだ。
多分、いろんな意味でオヤジより強いのではないだろうか。
まぁ、何も予定がなく暇だったオレの一日はアネキのおかげでいつの間にか時間が過ぎていたわけである。
良かったのか悪かったのかと聞かれれば良かったと答えるだろう。
けれどやっぱりアネキはオレにとって、
最強で最悪のアネキなんだ。









続く!


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