眠らぬ街のシンデレラ

□今はまだ*遼一
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「お前…可愛いな」


「き、急になんですか!?」


「さあな?」



遼一さんはいつもずるい。
いつも大事なところをはぐらかして。
私を期待させて。



「そんな俺が好きなんだろ?」


ああ、そんな声が聞こえてきそうだよ。

ドSの彼の口から零れる言葉は、意地悪のようで優しい。








私の部屋のベッドの上。




「なあお前いつから俺のことが好きだった?」




「なんでそんなこと聞くんですか!?そういうのデリカシーがないって言うんですよ!」



「そう怒るなって。眉間にシワができるぞ。」


そういって人差し指で私の眉間を軽くつつく。



「…ああ分かった。俺と出会った頃だろ?一目惚れか?」


「いいえ!違います!」




あれは、私にとって最悪とも言える出会いだった。だって、カジノに行った翌日朝起きたらホテルの部屋に遼一さんと二人きりで…。

それに加えて遼一さんに「昨日の続きがしたいわけ?」とか「もう一回脱がせてほしい?」とか言われて、
記憶もない自分もだけど、とにかくサイテーだと思った。



こんな人とは付き合えない。付き合いたくない。このときはそう思ったはずなのに…





「じゃああれだろ。俺とデートした時か。」



「…」



「お、当たりか」



「遼一さんのばか!」



あのとき、ディナークルーズに行って恋愛についての話になって、遼一さん「恋愛なんて、バカバカしくてくだらないことだらけ」って言ってたっけ。



「そう分かりやすいところが可愛いって言ってんのに」




「…」



「おまえさあ、その顔、他の男の前ですんなよ。特に未来や千早さんにはな。」
 


あ、遼一さん顔が赤い。

今ではそんなくだらないって思ってないって思っていいのかな?




「ふふっ」


「…お前、何笑ってんだよ」


「遼一さんの方が可愛いと思って。」


「お前…言ってろよ」




困ったように遼一さんが笑う。
私もつられて一緒になって笑った。




「名無しさん…」


遼一さんが私のことを抱きしめる。
その手つきはどことなく優しかった。



「遼一さん酔ってます?」


「んー…酔ってねえよ」



うそ。絶対酔ってる。
さっきまで、貴重なワインだとかなんとか言って、私の部屋でワイン飲み干してたし…


「だって遼一さんなんか優しい。」


「俺は、いつだって好きな女には優しいの。」




確かに遼一さんは本当は優しいんだよね。
もっともっと私に本当の姿を見せてほしい なんてわがままかな?

そんなことを思って私は、今までの遼一さんとの思い出を思い返していた。




連載のネタ作りのためにデートしたり、


急にイギリスに行くことになり、シェイクスピアの生家にいったこともあったっけ…。


そこでは遼一さんの初キスの相手の名前を聞いたりして…。ええと確かさくら組のエリカちゃんだっけ…


うう、我ながらすごい記憶力。




遼一さんのことだったら なんだってずっと覚えていられる。…そんな気がした。



「遼一さん、頼りないかもしれませんがもっと私に頼ってくださいね。」


「…んー」



「遼一さん?」


遼一さんの方を見る。



「スー…」



って寝ちゃってるし…
…今日はここに寝かせてあげよう。






ああ、なんだか遼一さんの寝顔見てたら私も眠くなってきた…



隣で眠っちゃおうかな。



今日くらい…いいよね?










翌日





「おーい名無しさんさーん」


俺は、無防備な顔で寝ている名無しさんを起こす。



ああ、何で寝ちゃった 俺




前は隣の部屋にこいつの同居人がいるからって我慢したけど…

今日は帰ってこないって言ってたのに。

今日こそは、と思っていたのだが。



…まあいいか、寝顔に免じて許してやる。あんまり待たせんなよ?
なんていいながら、可愛い顔をして眠っている名無しさんの横顔にそっとキスをする。



「う…ん」


「お前…起きてたのかよ」


「あ…遼一さん。おはようございます。」


って今起きたのか。よし、ちょっといじめてやろう。





「お前…今日は声我慢する必要もないよな。」


「………うん」


「…お前…いいのか?」


「うん」




こいつ…冗談のつもりだったのに

顔真っ赤にしやがって…


…どうなっても知らねえからな



遼一がそっと名無しさんの手を引いて自分の元に引き寄せる。

そして、ひょいと名無しさんのことをお姫様だっこする。


「…遼一さん?」


「あ? …まさか、やっぱやめるなんて言わねえよな?」


「ううん。違うの」


「じゃあなんだ?」


「遼一さん…好き。」


名無しさんが消え入るような声で言う。



…このシチュエーションでそれは反則だろ。



でも
俺だってそう思ってる。
なかなか声に出さないだけでさ。


中高生じゃあるまいし。



でも今日くらいは言ってやろうか。






「俺も好きだよ。名無しさん。」





そうして
名無しさんは遼一にその全てを委ねたのだった…。







この日が甘い甘い一日になったということは二人だけの秘密。







そして…
俺がこいつに依存しているということは、今はまだ…言わない。

 

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