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□愛かそれか
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「んん、」


 ふと今まで閉じていた瞼が開く。さっきまで真っ暗だった部屋は明るい日差しに満ちていた。上半身をおこしたとき、開きっぱなしの携帯の存在に気が付く。画面が真っ暗になっているそれを手にし、適当なキーに触れる。一番に表示された「通話時間 27分09秒」の文字。そうだ私、南沢に電話かけたんだ。そこでやっと目覚めてきた脳。でも27分も電話してないよな、と首を傾げる。さっきはごめんと南沢に電話をかけようかとも思ったが、まだ8時4分。深夜に起こしちゃったし、まだ寝てるよねと自己完結し携帯を閉じた。その時チリン、と控えめに鳴いたストラップ。これは南沢とのお揃いだ。彼はもう、雷門にいないのだが。その現実が私を酷く苦しめる。言わないと決めていた言葉が口の隅から溢れてしまった。


「会いたい、よ」

「それが俺だったらいいんだけど」


 はっとして声がした方を見れば、そこにいた。幻覚?偽物?目を凝らしてみるが、幻覚じゃない本物だ。彼は扉を背に確かにそこに立っている。


「…南沢っ、会いたかった」

「俺も」


 そう微笑んだ南沢は南沢でやっぱり彼は彼で変わってなかった。私に対する気持ちも変わってない、って自惚れてもいい、ですか?









20120114/か、書けた…!遠距離みたいなもんですよね。深夜の電話がなかなか切れなかった南沢さん。あ、南沢さん不法侵入だ。

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