陵辱の地下室

道端のタンポポ
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麗子のアパートの近くには全国でも有数の設備を誇る総合運動公園があった。

季節を問わず、様々なスポーツの大会が開かれ、大学や社会人のクラブが合宿をしていた。

スポーツにさほど興味がない麗子にはあまり縁のない世界ではあったが、それでも時折見掛けるアスリートたちのキラキラと輝く瞳と、練習でヘトヘトになっている姿はやはり眩しい輝きを放っていた。

「夢中に追い掛けられる夢があるって素敵」

なんて羨ましさもある。

正面から4人の男性が歩いてくる。全員ジャージ姿で1人はたくさんのボールを袋に入れて担いでいる。バレーボールだろうか。1人は大きなバッグを2つ重たせうに担いでいる。残る2人が台車にロッカーを乗せて押している。

「合宿かな?」

麗子は普段良く目にする合宿中の選手たちの姿を彼らにだぶらせていた。

すれ違う麗子と男たち。

一瞬男たちの刺すような視線を感じたが、

「自意識過剰?」

と自ら笑って打ち消した。

『あのぉ…すみません』

そう声を掛けられて麗子は振り返った。

目の前に今すれ違ったうちの男の顔があった。

あまりに顔が近かったので麗子は驚いて後ずさりしようとした。

しかし、腹部に強烈な鈍痛があり、麗子の意識は目の前の男の顔から首、胸へと薄れながら崩れ落ちる視線とともにそこから先が途切れた。

あっという間の出来事だった。
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