陵辱の地下室
□道端のタンポポ
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うだるような暑い日だった。
麗子は仕事を終え、最寄り駅で電車を降りてアパートへの帰り道をぼんやりと考え事をしながら歩いていた。
「今日は一段と蒸し暑い夜になりそう…」
暑いのが苦手な麗子にとって夏のクーラーは必需品、帰りがけに買って帰るアイスクリームもまた麗子に幸せをもたらす必須アイテムである。
仕事の疲れもいつものコンビニでアイスクリームを買えば一瞬で忘れられる。21歳になったというのに麗子はこのときばかりは高校生か中学生に戻ったような気持ちになる。
「哲男と食べたアイスクリーム思い出すなぁ…」
麗子の淡い恋の思い出。
高校生時代付き合った哲男と一緒に食べたアイスクリームが思い出される。
高校生同士らしい初々しいデート、手を繋いだだけ胸はドキドキし、ファーストキスのあとはたたただ泣いた。
哲男はそのあと当然のように身体を求めてきたが、麗子は今時珍しいほどにガードが固く、キス以上のことは許さなかった。
「哲男は今頃何してるんだろ?」
懐かしい情景が思い浮かぶ。
あまりの麗子のガードの固さに、高校卒業前に哲男に振られた。見事に別の高校の1つ年下の女の子と二股かけられて麗子はあっさり振られた。
悲しかったがある意味麗子は冷静でいられた。
「私の理想は優しく私を守ってくれる人」
そう心から思う麗子はロマンチックすぎるロマンチストであり、いずれ現れるであろう理想の王子さまを追い求めていたのである。
通い慣れた道ではあるが、そんな思い出に浸りながら幾分頬が緩んで足取りも軽やかな麗子であった。