哀願〜あの時あなたさえ来なければ〜

□荒波
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守はサッカー選手としての将来を諦め、マネージャーとして高校生活を送った。

自分の目指す道も選手からスポーツマネジメントの分野へ変えた。

夏美とは喧嘩もしながらも、楽しく、充実した日々を送っていた。

守は都内の大学受験に向けて勉強していた。夏美は都内の服飾関係の専門学校への入学が決まっていた。

『あとは守が大学合格するだけだよ。落ちるなよ〜

夏美が笑って守に迫る。

『冗談でも落ちるなんて言うなよな…。』

守が夏美の頭を小突く。

『暴力反対っ

夏美が嬉しそうに笑う。

『守が大学合格したら、あたし、守のアパートで同棲しちゃうんだ。』

『おいっ、マジかよ…。さすがに親父さんが許さねぇだろう。』

『平気。ちゃんと自分のアパートは借りるから。』

『何だそれ?』

『夏美ちゃんの悪だくみ〜

『そりゃまずいだろ、いくらなんでも…。』

『守は一緒に棲みたくないの?』

『そんなことないけどさぁ…』

『ん〜?さては大学行って新しい出会いとか期待してるのかぁ〜?許さな〜い

夏美は両手でポカポカと守の頭を叩く。

『ち、違うってそんなこと考えてないって

『ぢゃあ、なぜ同棲するの乗り気じゃないの?』

『だって夏美のお父さんに約束しただろ?あの日…。』

『そりゃそうだけど…さ…』

夏美がつまらなさそうに頬を膨らませて守を見つめる。

『大丈夫。大学も合格してみせるし、東京行っても浮気なんてしないから。』

『ホントに?』

『ホントだって。』

『ホントにホント?』

『疑り深いなぁ…。ホントだよ。』

『じゃあ、証拠をみせて。』

夏美はそう言って目を閉じた。

『証拠って…。』

『チューしてっ。』

『おい、俺んちじゃマズいだろ…。』

『チューしてぇ〜っ』

駄々をこねるように夏美がキスをせがむ。

『守?母さん買い物に行ってくるから。5時過ぎには戻ってくるけど、雨が降ってきたら洗濯物取り込んでおいてね。』

階段下から母の声がする。

守はびっくりして

『あ、ああ、わかった。』

と上擦った声で返事した。

『誰もいなくなったよ

夏美が守を見つめる。

『したくなっちゃったの?』

『うん。』

お互いの唇を重ね合う2人。

夏美の耳に舌を這わせ、吐息を吹きかける。

『あんっ…』

夏美が甘い声を上げる。

再び唇を重ねると、守はゆっくりとベッド夏美を押し倒した。
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