■ピーチボーイ![1巻]

弐「誇り高き用心棒!」
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宿屋を出た僕は、取り合えず、宿場町で栄えるこの町を宛もなく歩き続けていた。

歩きながら僕はこれからの事を考えてみる。

まずは、思いきって東方へ向かってみようかな…と。

この吉備の国なんかより、遥かに栄えている河内の国や、和泉、摂津…。
とにかく有力な情報収集なら大きな都が多い畿内だろうと考えた僕は、取り合えず吉備の国を出て東隣の国、播磨の国を目指す事にした。

とかなんとか考えながらいつの間にか狭い路地を歩いていた僕。

どんくさい僕でも、さすがに気が付いた事が一つあった。

…な、なんだか怖〜い面と身なりのゴロツキに囲まれている!
すごく囲まれている!

やばい…。
身ぐるみ剥がされて、最後にはどこぞかの池とか湾に沈められちゃうんだ…!

なんて最悪な事態を想像した僕は、生唾をごくりと飲み込むと、咄嗟に走り出しす。

「お、逃げやがったぞ小僧!」

「追いかけて取っ捕まえて身ぐるみ剥がしてやれぇい!いい金になる!」

すると、ゴロツキ、もとい盗賊共はそう話しながら僕の後を追って走ってくる。

ひいっ!やっぱり身ぐるみ剥がされるんだ…!

僕は目に大粒の涙を溜め、歯を食いしばってとにかく走る。ひたすら走る!

妖怪やもののけなんかより人間が一番恐ろしいじゃないか!
と身に染みて感じた瞬間であった。

「おらおらぁ!待てぇ!小僧っ!」

もう少しで追い付かれそうだと思った、その時、目の前が大通りに繋がっているのが見えた。

やった…!
人混みの中に紛れれば、盗賊共を撒ける!

そう思った僕は、最後の力を振り絞って大通りへと向かう。


…が、大通りは予想と反してこじんまりしていて、人混みどころか、人っこ一人いない。

えええええ!

僕は拍子抜けで一気に体の力が抜け、その拍子に小石に蹴躓いてしまった。

「うあっ!」

そしてそのまま地面にドシャっと転がる。

「う、いてて…。」

「はぁはぁ…、やっと捕まえたぜ小僧…」

「残念だったなぁ〜。さぁこっちへ来い!」

盗賊に腕をガッシリと掴まれ、もう一人の盗賊には首根っこを掴まれ、僕はどうにも出来ない体勢にされてしまった。

「…くっ!離して…!」

僕はじたばた必死にもがいて抵抗する。

がしかし、それが仇となった。

シャキーン。

「…大人しくしねぇと…、分かってるな…?」

盗賊が小刀を取り出し、僕の喉仏に突き付けてきたのである。
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