■ピーチボーイ![2巻]
□外伝「紋白の死に場所」
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瓜子姫と紋白が出会うまでのお話です。
SSより長く、途中までシリアスです。
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もうすぐ冬がやってくる…。
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俺の名前は紋白。
一応、武士だ。
一応と言うのには理由がある。
俺は二日前に使えていた城と、そしてその城の主を失ったからだ。
仕方ないと言えばそれで話しは終わる。
何故なら今この世は乱世の真っ只中。
こう言う話は、いくらでもこの日本国には転がっているだろう。
だが、武士である俺。即ち主の武器でしかない俺が、主を失ってもなお生きているという事は珍しいだろうな。
俺だって敵勢に火を放れた主の城の中で、共に戦ってきた仲間、そして主と共に逝くつもりだった。
だが、俺はまだ生きているー…。
殿ー…。
一体、俺はどうすればいい…?
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俺は若狭の国のとある都にいた。
死場所を探している。
その筈だったが、何故か俺は人の活力で溢れる町中をさ迷い歩いていた。
だが、うろうろと人の姿で徘徊するのも恥だ。
俺は雀の姿に変身し、店屋の屋根上で惚けていた。
そう、俺はおとぎ人。
本当は表舞台、否、人の世・俗世に姿を現していい身ではない。
だが俺は武士の誇りを胸に、人の元に仕えた。
人は憎かったが、だがあの方の人望にはこの孤高で人嫌いな俺でさえひかれていったものだ。
だが、所詮人望が厚い人だろうが人は人。
俺の正体が分かればどうせあの方も俺を下げずみ忌み嫌うものだと思っていた。覚悟はしていた。
しかし、違った…。
あの方は、最後まで俺を一人として見てくれていたんだ…。
― 二日前 ―
とある城。
敵勢に城を囲まれ、火を放たれたこの小さな城は、落城を待つだけの死の城であった。
この城の主とその家臣達は天守閣に集まり、死が刻々と近付く中、最後の盃を交わす。
「紋白、揚羽、黒羽、蛇ノ目、大紫。
こんな弱小の俺に最期まで付き合ってくれたお前達は俺の誇りだ。そして、俺そのものだ。
皆、あの世に行っても地獄に行っても、また皆に会いたい。身分が逆になってもな!」
ワハハと笑うと、その男・この城の主“山繭(やままゆ)”は皆を見渡す。
名を呼ばれた家臣達は、ハッとそれぞれ返事をすると皆は主・山繭の言葉に涙を流す。
「おいお前ら!そこは泣く所じゃない、笑う所だぞ!?」
そう山繭は言うも、家臣達の涙はとまらない。
そんな中も、火の魔の手はすぐそこまで迫っていた。
下の階からバチバチ、ゴウゴウと凄まじい音が聞こえてくる。
だが、ここに居る者達は皆誇り高き武士。
火にまかれて死ぬのを待っている訳ではない。
…己で世界は切り開くのだ。
つまりは、自害・切腹である。
家臣達は皆一斉に自分の愛刀を抜き、刀身を、切っ先を己の腹に当てる。
世界を切り開く為に。
バタリ。バタリ、と家臣達は自害し事切れて逝く。
紋白も勿論、愛刀で自らを貫く構えをとる。
腕に力を込め、刀を自分の方に引き寄せようとした、その時だった。