■ピーチボーイ![2巻]
□参拾「道中楽あれば苦もあるさ!」
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旅道中 参拾ノ巻
「道中楽あれば苦もあるさ!」
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― 鬼の居城 ―
赤い瓦を基調とした城。
その天守閣の一廓にある玉座のある大部屋。
そこには、桃太郎達との激戦でボロボロに傷付いた明国の女鬼、天の邪鬼・紅梨と、彼女を助け出した日本国の鬼の参謀・火飢の姿があった。
「…何故…、私を助けた…」
紅梨は苦痛で顔を歪ませながらも火飢を睨み付け言い放った。
「…明国の鬼…。
いや、天の邪鬼共の王が崩御し、お前らは滅びの一途を辿っていると聞いた。
だから、明国から今乱世で人々の怨み憎しみの横行するこの日本国に糧(エサ)を求めにやってきたのだろう?
お前は、飢え死に寸前だった…。違うか?」
火飢は、フンッと鼻を鳴らし聞き返す。
「くっ…。
だったら何だと言う…。
助けた理由にはならないわよ…」
そんなあくまでもかたくなな紅梨に、火飢はハァと息をもらし、彼女へと歩み寄る。
「…力を貸してほしい。
我が王の為、鬼の繁栄の為に…」
そして静かに、だが強くそう述べた。
その言葉に紅梨は驚愕する。
「…力を…、だとっ!?」
「そうだ。
国も違えば、種も違う。
だがくくってしまえば同じ鬼。
憎き人間共に一泡吹かせてやりたいと…、思わないか?」
火飢は、ニヤリとほくそ笑み、そう述べる。
その瞳の色は血のように真っ赤で、まるで地獄の業火のようだが、与える雰囲気は氷刃のように冷たい。
その問いに対し、紅梨は火飢に答えるように自身も、フッと笑みを浮かべた。
「…分かったわ。手を組んであげる―…。
…それで?
あんたん所の鬼王は?
あの坊やはどこにいるのかしら?」
「火輪様は、とある計画の為、自らこの日本国を巡って旅をしておられる」
「ふぅ〜…ん。
ま、その計画とやらが世界一面白い見世物であると期待しておくわ…。
んふふふ…」
紅梨はそう述べ、不気味な笑みを浮かべた。
こうして明国の鬼と、日本国の鬼は、互いに手を取り合ったのである。
―…憎き人間を滅ぼす。
その目的の一致によって…。