ドラゴン*アスタリスク‐anc‐

□第4話:東の伝承
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第4話:
  東の伝承
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災害が起きた後でも、
いつもと変わらない朝が来た。


日が昇り、草木は照らされ生き生きと背を伸ばし、
朝霧はだんだんと濃度を薄めて行く。

小鳥達や虫達の鳴き声はさすがに聞こえて来なかったが、
朝の自然の営みは、
災害前とさほど変化はないようだ。

シエカとアロはそう感じ、不思議な気持ちでいっぱいになった。

「ここはそこまで酷くなかったのかな…?

地面がこんなにひび入ってるのに、日は昇るし、草木も生き生きしてるよ…?」

シエカは草木に手を伸ばし、軽く触れながらそう呟いた。

「そうみたいね…。
災害が起きたからって、
何もかも終わっちゃう訳じゃないのかな…?」

シエカに答えるように、
アロは自然界に流れる空気を吸い込み、そう呟いた。

「さすがに、あの火柱が噴き出してた山の方は、
こうはいかないだろうけどね」

「うん、一体災害って何なんだろうか…」

何の解決も見出だせない難儀な疑問を、二人はしばらく考えあっていたが、

とりあえず、お腹も空いてきた事だし、
二人はアロの言っていた
“東の町リリオ”
を目指すべく歩き始めた。




東へ向かって歩き続ける事、三時間。

この辺りは、ミドの町周辺とは違い、あまり災害の余波を受けていないようであった。

多少の地割れはあるものの、小動物達がちょろちょろと駆け回り、小鳥もさえずりを交わしている。

いたって普通の風景だ。




それから更に、二時間ほど歩き続け、やっと二人は辿り着いた。

東の町 リリオ に。


アロの村やミドの町とは比べものにならないぐらいに大きくて、栄えた町で、
人々が多く行き交い、活気に溢れている。

いろんな顔立ちの人種がいて、いろんな言語が飛び交っている。

そんな町の活気に、アロとシエカは圧倒され、路頭に迷っていたが、
とりあえず、簡単な食事が出来そうな店を探しに行くことにした。

少し歩くと、小さな食事の出来る店が見つかり、
二人は安堵の表情で空いていた席についた。


「う…わぁ〜ぉ。
こんな都会だったとはね…。
私、こんなに一時に人を見たのって初めてよ!
なんか〜…、汗臭くって嫌かも!

…あ〜でも、あれ見て!あれ!…おいしそ〜〜う!」

アロはコロコロと表情を変え、なんだか楽しそうである。

「本当に、人がたくさんだね…。
でもやっぱり皆、昨日の火山噴火の事で盛り上がってるみたいだ。
聞こえてくる会話の話題がほとんどそれだよ」

「確かに。皆、不安そうな顔をしているわね…」

二人の言うように、
この町は確かに活気があるのだが、町の人達の表情はどこか不安そうであった。
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