ドラゴン*アスタリスク‐anc‐
□第3話:崩れはじめた平穏
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第3話:
崩れはじめた平穏
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「それじゃあ、元気でね!
すべてに決着がついたら、私の村に必ず戻ってきてよねっ!」
ミドの町の石室遺跡で、
この惑星の成り立ちと現状を知ったシエカは、
遠くどこまで続くか分からない旅に出る決意をした。
私は行けないよ?村の仕事があるから
と、アロは明るく言っていたが、どこか寂しそうに見えた。
シエカも寂しいな、と内心思っていた。
いつも自分を笑わせてくれたり、何も知らなかった自分に、嫌な顔一つせずにいろいろと教えてくれた彼女は、密やかに心の支えになっていたのかもしれない。
でも、自分は今から何処に流れ着くかも分からない旅に出るのだ、
そんな危険な旅に、彼女を巻き込む訳にはいかない、
そもそも彼女とは出会ったばかりである。
「うん、ありがとう。
僕にいろいろと教えてくれてありがとう!
おじさん達にも、よろしく伝えておいてくれ」
「相変わらず他人行儀だなぁ〜…。せっかく知り会えたんだしっ、もっと気軽な気持ちで話してよね…!
って、もうお別れだし…ま、いっか」
アロに頭を思いっきり小突かれ、前のめりになったシエカは、
それじゃあ、とアロに手を振った。
「…さよなら…。
また絶対会おうね…、シエカ…」
呟くように小さなアロの言葉は、シエカには届かなかった。
アロは、しばらくミドの町に滞在するために宿に向かうシエカを精一杯見送った。
これで、この奇跡の出会いの物語はもう終わってしまうのだと思うと、
胸が苦しくなった。
「でも…、私は一緒に行けない…。
私には、家族がいるから…」
そう呟くと、アロは歩き出した。
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ミドの町を離れ、だんだん道が緩やかになってきたのを感じ、
アロは取り合えず一休みするべく、その場に腰をおろした。
胸が苦しかったし、山道は険しくて辛かったらしく、予想以上に体力を奪われていた。
アロは息を整えると、
ミドの町のあった方角を眺めた。
「もう振り向かないって、決めたのに…」
アロは深い溜息をつき、そして、物思いにふけった。
そのうちに、数時間という長い時間が流れて、
アロは慌てて立ち上がった。
「あっ、あたし何してたんだろっ…!?
はぁ…。今日は野宿だなぁ…、こりゃ…」
そう言って再び深い溜息をついて、ようやく歩き出そうとした、その時だった。