■ピーチボーイ![1巻]
□拾参「京の都へ!」
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旅道中 拾参ノ巻
「京の都へ!」
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輝夜姫から逃げるように宿を後にして歩き続ける事半日。
彼女から逃げ延びたと思いきや、実は…。
この半日の旅路の中で、輝夜姫は僕たちに追い付いて来て、僕を城へ連れていこうと拉致したり、やっとの思いで撒けたと思ったら、偶然町の中で鉢合わせしたり、野原で休憩してる時、可愛い兎がいたから“おいでおいで?”して呼んだら輝夜姫だった…。
等々、僕達の行く先々でことごとく彼女は現れる…。
僕達は上手く切り抜けて彼女から逃げ出す。
追い付かれる。
逃げ出す。
撒く。
半日の間、これの繰り返しだったのだ。
「はぁ…、はぁ…。
何なのだあの姫は…。体力といい、行動力といい、あれで本当に姫なのか!?」
佐々海は額の汗を拭いながらぜぇぜぇと話す。
「…でも、桃太郎みたいにおっとりした子には、ああいう照れとか皮肉とかもなく、素直で率直で積極的な子があってるかもね」
そう、フッと笑い千宵に目をやる八彩。
その言動にはいろいろと意味が含まれていそうだ。
「……なんであたしを見るよ、八彩…」
千宵は息を整えながら、八彩をジッと睨む。
「欲しいモノは積極的になって狙っていかないと、いつか思いがけないモノに取られちゃうよ〜ってね!
ね?佐々海」
そう千宵に言い終わるや否や、八彩は今度は佐々海へと目をやった。
「どーいう事だっ!?
…むぅ。最近の八彩は俺の事を勘違いしてないか…!?
俺は別に小娘の事など…!ぶつぶつ…」
「佐々海と千宵がどうこうなんて、言ってないんだけどなぁー」
そうにんまりと笑い答える八彩。
それを聞いた佐々海は痛いところを付かれたようで、たちまち顔を真っ赤に染める。
「とにかくさー、桃ちゃん。
このままじゃ私達鬼じゃなくて、あの女に滅ぼされちゃうわよ。
だから、今度また輝夜が現れたら“ガツンッ!”っと一言言ってやりなさいよ。
“あなたには興味ないよ、化け猫兎さん、兎さんは月でお餅でもついてるのが一番だよ”とかなんとかさ」
えぇー…。
そんな酷い事僕が言うの〜?
それにいくら図太そうな輝夜姫だって、傷付くよ。
なんたって、追いかけられて捕まってお城に無理矢理連れていかれそうになるのは嫌だったけど、輝夜姫が兎に変身した時は、逆に癒されるんだよなぁー。
だから、完全に縁を切っちゃうのはもったいない気が…。
っというか、あのしつこさ、たぶん僕が旅を辞めない限り果てしなく追っかけてくると思う…。
“男の勘”ってやつ…。
その時であった。