■ピーチボーイ![1巻]
□拾「畿内へようこそ、桃太郎一行!」
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旅道中 拾ノ巻
「畿内へようこそ、桃太郎一行!」
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あれから丸1日歩き続け、無事に関所を越え、僕たちは五畿(畿内)の一つ“摂津の国”入りしていた。
八彩の話によれば、摂津は農漁業が盛んで、大昔はとある航路の起点で、淀川・大和川とが重なる“難波津(なにわつ)”と呼ばれる重要な港があったらしい。
その事から別名“津の国”とも言うそうだ。
僕たちはそんな摂津の国の、とある町の中を歩いている。
通る人皆活気に溢れていた。
はぁ〜…。
やっぱり畿内は一味違うなぁ〜…。
僕は辺りをきょろきょろする。
すると…。
「…ヒソヒソ。えー!嘘でしょ!?」
「見て…あの人!…まさかね…」
「ねぇ…そうよね!?やっぱり…!」
やたら道行く女性達がひそひそしながら僕達一行をちらちらと見てくる。
何…?
僕達がそんなに珍しいのかな?
それともなにか?
田舎臭い…とか!?
えぇぇ…。
僕は涙目になった。
なんだか一気に恥ずかしくなったのだ。
それでも聞こえてくるひそひそ話。
「ねぇ…。あの人、素敵…!」
「ああ、あの殿方ね!…本当。素敵だわ…」
「ちょっと…!あの人、もしかして…!」
「えぇ!嘘っ!?」
素敵って、僕達の中の誰の事だろう?
…まさか。
僕はにやける。
しかし、次の瞬間。
「すいません!
そちらの雅やかなお方!」
ひそひそ話をしていた3人の娘衆のうちの1人が、八彩に駆け寄ってくる。
ああー…。
やっぱり僕じゃないよねぇー…。
それにしても、八彩さんは女性にモテるなぁー。
八彩さんが旅に加わってから、村や町を通る度に女性に見つめられてたり、告白されたりしてたもんなぁー。
やんわりとそれを八彩さんは相手を傷付けないように断っていたなぁ。
そういう所もかっこいいよね…。
そりゃ八彩さんならモテて当然だよ!
雅やかで爽やかで…。