■ピーチボーイ![1巻]

八「迅雷!猿蟹合戦!【下】」
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旅道中 八ノ巻
「迅雷!猿蟹合戦!【下】」
―――――――――――

「ねぇー。柿まだぁ〜?」

千宵は座敷の上でゴロゴロ寝転がりながらぼやいていた。

「女子(おなご)のくせに、下品で意地汚い奴だ!」

「なによぅ!
犬のくせに猫の皮被った化け猫男!」

「ぬぁんだと…!?」

僕と佐々海と八彩は、きちんと用意されていた座布団の上に座っていた。

うん…。
千宵はもうちょとお淑やかにした方がいいと思うなぁ、流石に。

僕は苦笑を浮かべ、千宵と佐々海の口喧嘩を見守る。

「二人供…。落ち着きなよー」

八彩は二人に向かってニコッと意味ありげに微笑んでいた。

すると、喧嘩していた二人は、即座に喧嘩をやめ大人しくなる。

(…またあのクチバシでつつかれたんじゃ、堪んないわ…)

(だな…)

二人はヒソヒソと小声で話した。

「それにしても、カニさん遅いね」

八彩は呟く。

確かに。
カニさんが裏庭へ柿を取りに行ってから、結構な時間が経ったよなぁ。

何かあったのかな?
ちょっと心配かも…。

「僕、ちょっと見てくるよ!」

僕は立ち上がり、裏庭の方へ向かうのであった。

何もなければいいけど…。

僕は心の中のざわめきを抑え、カニの無事を祈る。


――――――――――――

裏庭はとても広かった。

様々な種類の草木や果樹が植えられている。

これも、カニさんが全部やったのかな…?凄いな…。

僕は感心しながら辺りを見渡す。

そして、一つの姿を見付け、僕は驚愕した。

「カニさん!?」

なんと、高い木の下であのカニがボロボロな姿になって倒れていたのである。

カニの周りには、まだ熟していなくて硬い柿がたくさん転がっていた。

僕はカニに駆け寄り、様子を見る。

「駄目だ…!気を失ってる。それに全身ひどい打撲だらけだ…。
これはかなり危ない状態だ…!」

僕は瀕死の状態のカニを手にそっと乗せ、皆の居る家へと急いだ。

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