■ピーチボーイ![1巻]

七「迅雷!猿蟹合戦!【上】」
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旅道中 七ノ巻
「迅雷!猿蟹合戦!【上】」
―――――――――――

「せ〜…のっ!」

タンッ。

「…播磨の国…到着!!」

そう。
僕達一行は、遂に、遂に!吉備と播磨の関所に辿り着いたのだ!

僕にとっては生まれて初めての国境越え…。

関所を通過するだけでも感動だった。

「ああ…長かった…。やっと、ようやく吉備を抜けられたよ…」

僕は感極まって涙する。

しかし、それを打ち破るかのように千宵はキツい一言を放つ。

「でも鬼ヶ島の情報、何一つ掴めてないんでしょー。国越えたからって何だってのよーっ」

う…、それはそうだけど…。

「だっ、だから!畿内に向けて一歩近付いたんじゃないか…!」

僕は必死に言い返す。

「多くの大きな都が点在する畿内で情報収集するのですよねっ!」

佐々海はそう言って、僕を庇うように間に入った。

「大きな都が多いからって宛になるの?」

「そりゃあ…、大きな都だったら人もたくさんいるから情報も多いし、可能性はあるじゃないかっ!」

「桃太郎の言う通り、大きな都ほど、より多くの情報が手に入ると思うよー。

…うーん、それよりも、畿内と言っても五つの国が股がるほど広いんだ、どこか一点に的を絞って情報収集したほうが、時間の短縮になるんじゃないかなー?」

八彩はそう言って考え込み、何か閃いたようで、手の平をぽんっと叩く。

「やっぱり、京の都なんかがいいんじゃないかな?
あそこは昔から妖怪、もののけ、それに鬼との関わりが深いからねー」

「そうですね…!
八彩さんの案で行きましょう!」

僕は、わぁっと一気に明るい表情になる。

やっぱり八彩さんは頼りになるなぁー…。

僕は惚れ惚れした。

その隣で、佐々海と千宵は珍しく顔を見合せひそひそと話始めた。

「なんかさ…、桃太郎ってば、八彩にべったりじゃない…?」

「うぅ…、桃太郎殿…。
ちょっと前までは、俺にべったりだったのに…」

そう言って唇をギリリと噛む佐々海。

「うっわー…、犬って焼きもち妬きねー。最低ー」

千宵は白い目で佐々海を見つめた。

その言葉に反応した佐々海は、すかさず千宵の頭を鷲掴みにし、激しく揺さぶるのであった。

二人は、“生きる仲裁凶器”もとい、八彩に見つからないよう密かに沈黙の戦いを繰り広げていた。

「じゃあ、京の都のある和泉の国に行く為に次は、摂津の国を目指すんだね!」

僕は八彩に問いかける。

「そうだよ。
桃太郎は地理に詳しいんだね?偉い偉いー」

そう言って微笑みながら八彩は僕の頭を撫でる。

えへへ…誉められちゃった!憧れの八彩に…!

学問だけは真面目に学んで来たからね!
それ以外、特に体術や剣の稽古はからっきし駄目だったけど…。

「ぐぬぬ…。またもや桃太郎殿…」

僕と八彩の少し後ろを歩く佐々海は唸り声をあげている。

その隣を歩く千宵は、完全に飽きれかえっていた。

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