■ピーチボーイ![1巻]
□六「犬猿も歩けばキジに当る!」
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旅道中 六ノ巻
「犬猿も歩けばキジに当る!」
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― 一方その頃 ―
『ちょっと犬っコロ!
もうちょっとそっちにずれなさいよっ!』
『貴様こそもっと横にずれろっ…!』
二匹は流されていた途中に運良く川から飛び出た大岩にしがみつき、その岩場の上で身を寄せ合っていた。
しかしその岩場は、二匹が乗れる最低限の大きさな為、二人が再び水流に流されるのも、時間の問題である。
『あっ、やめろ!押すな馬鹿!』
『落ちそうになってあんたにしがみついただけでしょー!?少しは女の子をいたわりなさいよね!』
『ふんっ。貴様など女ではない!雌猿だ!』
『なぁ〜にぃ〜よぉ〜〜〜〜〜っ!!』
ボカ、スカ、ボカ!
二匹は狭い岩場の上で押し合い喧嘩を始めた。
佐々海が滑り落ちそうになったり、千宵が滑り落ちそうになったり、延々とそれの繰り返しである。
そんな時であった。
バサァッ!バサバサッ!
一匹のキジが颯爽と二匹の目の前に現れたのである。
『君達があの少年の仲間だね…?こんな時でも二人はとても仲良しなんだね…!』
そうキジはニコッと微笑みと華麗に岩場に着地する。
『『どーこが仲良しだっ!!』』
二匹の声がはもった。
キジは、ふふふ…と相変わらず笑みを浮かべている。
『っていうかあんた、おとぎ人ね!?なーんであたしらを助けてくれるのよっ!
やましい事考えてたら、焼き鳥にして食っちゃうわよっ』
『盗賊やってた貴様が言うな…、貴様が…』
二匹は再び睨み合い、喧嘩を始めようと構える。
『ああ…、何って元気な人達だ…。
ここは、仕方ないねー』
そうキジが溜め息をつき、言うと…、
ガツンッ! ガツンッ!
キジは二匹のこめかみを、思いっきりクチバシでつつき、無理矢理二匹を黙らせた。
『ぶへっ…』
『うごっ…』
二匹はぐったりと地面にへたれ込む。
『さ、大人しくなった所で、急いで私の背中にしがみついてー?』
ニコッと笑うキジに、二匹は身震いし慌ててキジの背中にしがみついた。
(な、なんなんだこのキジは…!ただ者ではないな…)
(キジ最強説…!!)
二匹はそんな思いを巡らせていた。
二匹を乗せたキジは、勢い良く飛び上がり、そのまま上流方面へと飛行していく。
ビュウウウウ!
まるで隼のような早さであった。
(キジってこんなに早く飛べるんだったか…)
(いいから黙っときなさいよっ!
またつつかれたいの!?)
そうひそひそ話をし、二匹は必死にキジにしがみつく。