■ピーチボーイ![1巻]
□五「炸裂!犬猿の仲!」
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旅道中 五ノ巻
「炸裂!犬猿の仲!」
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昨夜は酷い目にあった…。
妖怪・疾風辻との激戦の後、新しく僕の仲間になってくれた猿のおとぎ人“千宵”と、僕専属の用心棒である犬のおとぎ人“佐々海”が、いつまでも口喧嘩をやめてくれなかったため、いつの間にか夜になってしまい、そしてその流れのまま野宿…。
野宿の間も終わらない二人の口喧嘩。
僕は何度も仲裁に入ろうとしたけれど…、駄目だった…。
僕にはあんな修羅場をどうにも出来ないよ…。
それほど二人は馬が合わないみたいである。
二人は寝言の中でも喧嘩していてうるさくて、とても熟睡出来る状況じゃなく、僕は今日、酷い寝不足だ。
頭がクラクラして仕方ない…。
「犬っコロの寝言のせいで、ぜんっぜん寝付けなかったわぁ〜…。
ほんと、うざい犬!」
「俺はお前の歯ぎしりの音で眠れなかったぞ!
腐れ小娘!」
その会話を聞いていた僕は、密かに驚いていた。
“俺”…?
佐々海って、一人称“俺”だったっけ…?
僕の前だと“私”…だよね?
っていうか、一番眠れなかったのは僕だと思うんだけど…。
なんて言えるわけなく、僕はどんどん明らかになっていく佐々海の本性に少しの恐怖すら感じたのである。
僕もいつかは佐々海にこんな風にけちょんけちょんに言われる日が来るのかな…と。
あー…。
それにしても、こんな口論の中、旅を続けなきゃいけないのか…。
僕は大きく溜め息をついた。
「ね…ねぇ…。
それより二人供、そろそろ出発しないとまた野宿になっちゃうよ…」
僕は二人の顔色を伺うように問う。
すると、さっきまで眉間にシワを寄せ怖い表情だった佐々海の表情がパッと切り替わった。
「そうですね桃太郎殿!
これは失礼しました!この猿めが文句不平を申していたので、私はいろいろと説教をしていたのです!」
僕の前で深く頭を下げながら佐々海はそう答える。
すると、隣でその様子を見ていた千宵はムッと膨れっ面になった。
「あ!この犬っコロ!犬のくせに猫被ってるわ…!
桃太郎さーん、聞いて下さーい。この犬、犬の皮を被った猫でーす。化け猫でーす」
反発するように言い返す千宵。
佐々海はキッと一瞬千宵を睨み付け、そして僕の肩をつかみ、歩みを促した。
「さぁさぁ参りましょう、桃太郎殿」
そしてそそくさと歩き始める。
「あっ!無視!?無視なわけねっ!?
ばーか!ばーか!馬鹿犬!」
それでも歩き続ける佐々海。
その後ろで千宵は一人罵声を浴びせ続けていた。
どうしたらこの二人を仲良く出来るだろうか…。
僕はいろんな想いを巡らせながら歩いて行った。