■ピーチボーイ![1巻]
□四「吉備団子は事故のもと!」
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旅道中 四ノ巻
「吉備団子は事故のもと!」
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『さぁ、座って座って〜』
僕達は、謎の喋る猿に茶屋に連れてこられ、店先の長椅子に座らされていた。
佐々海も僕も、依然困惑していて、お猿さんにされるがままである。
それにしても…一体いつから僕の背中にしがみついていたんだろう…。
『あ、ごめんごめんっ!
この姿じゃあれよね!ちょっと待って〜』
ん、この姿…?
すると…。
ドロンッ!
「はい!これでいいかなっ」
佐々海が犬に変身する時のように、ドロンッ!と白い煙がお猿さんを包み込み、そしてとある姿が現れ、僕達は驚愕した!
あああああああ!!
さっきの泥棒少女!!
そう、お猿さんはあの果物屋で盗みを働いていた泥棒少女の姿へと変身したのである。
透き通った金色の瞳に、茶色い長い髪を頭の上で縛っている。
桃色の桜柄の動き易そうな着物を着た少女。
僕は驚いたが、隣の佐々海はたちまち険しい顔付きになった。
「き、貴様…。
先程の泥棒小娘ではないか…!
我々をこんな所に連れ出して、何のつもりだっ!」
佐々海の剣幕に物怖じする事なく、少女は手をひらひら降って笑顔を作る。
「嫌っだな―!
お礼するって言ってんじゃん!かくまってくれたお礼!お礼!」
そう言って、佐々海の背中をビシバシと叩く。
佐々海は不機嫌な顔をして無口になった。
「あ、そうだ。
自己紹介がまだだったわね!
私の名前は“千宵(ちよ)”。猿のおとぎ人よ。
さっきは驚かしてごめんねっ」
「おとぎ人!?君が?」
こんな女の子でもおとぎ人なんだ…。
しかも堂々と公言してるけど、平気なのかな?
「貴様、よくもそう堂々とおとぎ人だと発言出来るな。
そんな事では、人当たりがあまり良くないのではないか」
「まぁね。確かに人当たりは良くないけど、しょうがないじゃない?
おとぎ人はおとぎ人なんだから」
千宵と名乗った少女はいともあっさりと答えた。
この子、すごい前向きに生きてるんだなぁ…。
「あ、そんな事よりお礼お礼!ねぇ〜!吉備団子3つ!」
「あいよ〜」
千宵は茶屋の店主へと注文する。
その隣で佐々海は再び険しい顔をしていた。