■ピーチボーイ![1巻]

弐「誇り高き用心棒!」
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旅道中 弐ノ巻
「誇り高き用心棒!」
―――――――――――

ぴっ、ちゅちゅっ、ぴちちちちっ。

浅くなってきた眠りの中、小鳥のさえずりが頭に響き渡る。

もう朝か…と、僕は重たい目蓋を開け、体を起こした。

うぐ…。
体のあちこちが痛い。すごく痛い。
この若さでもう体にガタが来てるよ…。

そう暗い気分に浸っていると、ゆっくりと部屋のふすまが開いた。

「お侍さん、昨日は良く眠れたかい…。
ああ、しっかり眠れたようだね」

部屋に朝の食事御膳を運んできたおじさんは、はっと鼻笑いした。

な…!なにその態度…!
と僕は猛烈に思ったが、問い詰める体力もなく、ただ言われるがままである。

「お侍さん。
顔に畳の痕がしっかり残ってるよ。
あんた寝相もろくでもないのかい…。
ま、それでも昨日は何だかんだであの化け物を倒したんだよな」

どんどん僕の欠点を突くような小言を言ってくるおじさん…。
僕は焼き魚の小骨を喉に突っ返そうになり慌ててお茶で流した。

「ところでお侍さん。
あんたは一体何しにこの吉備の国へ?

見たところまだ子供だし、刀の扱いも下手だったしなぁ…」

うぐ…。
またもや痛い所を突かれ、僕は口に含んでいたお吸い物を吹き出しはぐる。

「僕もこの吉備の国の者なんです」

「あぁ、そうだったのかい!…んで、その身なりからして、旅でもするのかい?」

「はい。鬼達の総本山
“鬼ヶ島”を探しているんです。
…でも、故郷の村を旅立ってはや10日…。鬼ヶ島の手掛かりが全くもって手に入らず…困っています…」

僕は深い溜息をつき、御膳に箸を置く。

「鬼と人は相容れぬ存在。しかし常にお互い隣り合って成り立つ表裏一体なる存在でもある。

っと寺院仏閣では言われているからねぇ。
高位の鬼は、人と同じ姿を持つとも言うし、日本全国を巡って探すしかないんじゃないかねぇ?
案外どこかの人里が、実は鬼ヶ島だったとか、あるかもしれないよ?」

なんと、このおじさんからそんな真面目な話が聞けるとは!
と僕は驚いた。

けど、そうだ。
鬼は日本各地に出没していると聞く。
だったら、つぐみちゃんを拐っていった鬼、いや鬼達の故郷“鬼ヶ島”を見付け出すためには、やはり、この吉備の国に留まっているだけでは駄目なんだな。

だったら!日本全国をしらみ潰しに探してやるっきゃない!

僕はそう腹で決心した。

「おじさん!僕、日本全国を旅して廻る覚悟が出来ましたっ!
あなたのおかげですよっ!おじさん!」

少なからず、他国へ旅立つきっかけをくれたおじさんに感謝しようと僕はおじさんに満面の笑みを投げ掛ける。

が、

「……でもあんた、
吉備の国を出る前に、仲間や同志でも見繕った方がいいよ…。
はっきり言ってお侍さん一人じゃぁ…ねぇ…」

僕は半泣きになった。

おじさんの言う事が、悔しいけど一利あるからだ。

「そう…ですよね…。
僕一人なんかじゃ鬼退治なんて…ぶつぶつ」

「まあ、頑張りな!お侍さん!」

ふてくされ肩を落とした僕の肩をポンッと叩くと、おじさんはニッコリ笑って部屋を後にした。

そうだ…。
仲間が見つかろうと見つからまいと、僕は彼女を助け出すためこの命に変えても頑張らなくちゃ…!

そう自身を奮い立たせ、せっせと宿屋を出る準備を始める。
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