ブレーメン!

□3.ゴンドワナ
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レンブラントを筆頭に、夜警団の援軍に四方を囲まれたユーゴー。
じり・・・っと敵は彼に詰め寄っていく。

「大人しく投降したらどうだい?」
「おーおー、さっきまで骨に隠れてた坊ちゃんが偉そうに・・・」

爽やかな夜警団筆頭の挑発に、ユーゴーは皮肉交じりに返した。
それに対し、フッとレンブラントは笑みを浮かべた。さながら貴公子スマイル。

「ふふ、無駄口が叩けるうちが可愛げがあるというものだよ!」

レンブラントがブレーメンの不死鳥に向かって発砲した。刹那、夜警団もそれに応戦するように射撃開始。

ドドドド!

空間を飛び交う銃弾を、背中の翼を駆使してかわすユーゴー。
その光景に夜警団が騒めく。

「これが団長から聞いていた噂の・・・!」
「背中から鳥の翼がはえてる!」
「どういうトリックなんだ!?」
「トリックに見えない・・・!本物の化け物だ・・・!」

ユーゴーの翼を見たものは例に漏れずこのような反応をするもので、当の本人はうんざりしていた。

「みんなうろたえるな!まやかしに屈せず、ただ的を射る事のみに集中せよ!」

レンブラントの叱責が飛ぶ。
夜警団はその団結の元に再び集中し、ユーゴーを捉えるべく攻撃体制に入る。

「させるか!」

ババババッ!!

このターンで先に動いたのはユーゴー。
翼で空を駆け抜けながらエオジルエットとエオミストラルを発砲する。
フルオート射撃が土砂降りの雨の如く降り注ぐ。
何人かがそれの餌食になった。

「やるな、ブレーメン!」
「うるせぇ!あと!さっきから気になってたんだが、お前コートのボタン掛け違えてんだよ!」
「・・・あ」

ユーゴーの指摘にレンブラントは、えへへまたか、と眉を下げた。

「こんなドジっ子に翻弄されるとか・・・」

何故か物悲しくなるユーゴーであった。

✳✳✳

「出来た!終わった!書き写した・・・」

マリリンの歓喜の声があがる。

「やったねマリリン!」
「流石だわ、マリリン」

アヴリルとハサウェイの賞賛を受け、マリリンは得意顔になった。

「このまま他の資料も探すべきなのかしら」
「ユーゴーはまだ持ちこたえているわ。もう少し探してみましょう」

コクリと頷くと、マリリンは他のデータを探し始めた。

その時であった。

ドーン。

突然の爆発音だった。
音からしてここからは遠いが、ゴンドワナ博物館の館内だろう。

「なに!?」
「うわぁ!びっくりした!また援軍!?」
「落ち着いて2人とも。
状況は一変したわ。一旦この部屋から出ましょう」

ハサウェイの指示で3人はこれ以上の深追いはやめ、とりあえずユーゴーと合流する事にした。

(あの子の仕業ね・・・)

ハサウェイは心の中でぽつり呟いた。

ユーゴー対夜警団の場面も同じく突然の爆発音で混乱していた。
慌てる夜警団の様子を見て、ユーゴーはこの爆発音は警察側や夜警団の仕込んだものではないと推測した。

(だとしたら何者が・・・?)

もちろんマリリン達の仕業ではない事も分かっている。
となれば、頭の片隅に浮かんだ一つの記憶を思い起こさざる得ない。
それは先日のある会話。

怪盗サンドリヨンという怪盗が出没しているの。
古物店のご主人もどうか気を付けて。
それでは、ごきげんよう

古物商ファンティーヌでそうユーゴーに忠告をする貴婦人がいた。
その貴婦人の言っていた怪盗サンドリヨン≠ニいう都を拠点に活動している怪盗。

「怪盗ブレーメン様に宣戦布告ってか」

この爆発が、例の怪盗サンドリヨンの仕業であろうとユーゴーは確信した。

「ユーゴー!」

そこにアヴリル達も無事合流し、一気にブレーメンの「ライバル業者」へのタイマン意欲は高まった。

「あばよ坊ちゃん。お前らの相手してらんなくなったんだわ」

ユーゴーはそう言うと混乱する夜警団の指揮をとるレンブラントにそう言い放った。

「ま、待て!ブレーメン!」

ソーダライトの双眼が離れていく黒いフロックコートを追うが、何者かの介入が入った以上、深追いするべきではないと、彼は足を進める事は出来なかった。
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