百日草に誓う
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少年と少女が中学2年生になる頃には2
人はほとんど疎遠になってしまっていた。だが、何か重大な事件があったわけではない。ただ、少年は念願の1軍へ、少女はチームのエースとなり、互いに会う機会が減ったためだった。
『テツヤ、最近1軍どう?』
『皆すごいです。今は練習についていくのでいっぱいで』
『そっか、よかった』
少年は心底楽しそうにバスケをしていた。少女はそれを嬉しそうに見ていた。しかし、コート上では少女が楽しそうに笑う姿は減り始めていたのだった。
*****
試合開始5分にもかかわらず、尋常ではないペースで誠凛と海常の試合は進められていた。
追い縋るのが精一杯の誠凛に対し、海常のエースの黄瀬涼太はまだ底を見せていなかった。
「すみません、1つ問題が・・・」
それに加え、切り札である黒子のミスディレクションの時間制限。いつ均衡が崩れてもおかしくはなかった。
「・・・から・・・ダメだっ・・・しょ」
ふと耳に入った声に黒子はハッとギャラリーを見上げた。しかし、どこにもその声の主は見当たらなかった。
≪タイムアウト終了です≫
「あ゛ー!!黒子君シバいて終わっちゃった!!」
「とりあえず、黄瀬のマーク続けさせてくれ・・・ださい。もうちょいで何か掴めそうなんす」
「あ、ちょっ!!もう!!」
コートに入っていく選手たちにリコが指示を出し、黒子もそれに頷きコートに戻った。
(それでもこれが、ボクのバスケです)
*****
「だから見えていないだけじゃダメだって言ったでしょ」
雫の視線の先にはミスディレクションが切れかけ、スティールをされている黒子がいた。ギャラリーの柵から少し離れ、下からは見えない位置に雫は立っていた。制服の上にパーカーを羽織り、フードをかぶった雫は誰にも見つかることはなかった。
(プレースタイルは尊敬する。でも、そこで止まっていいような才能じゃない)