また会える日まで、

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バンっ!!




扉が勢いよく開いた。観音が驚いてそちらを見ると、そこにいたのは、俯き、肩で息をしている紅綾だった。



「どうしたんだ、紅綾?」

観音の声に紅綾は少しだけ顔を上げた。その瞳の色を見て、さらに驚いた。


「どうしよう…観音…」

紅綾はか細い声で言った。

「目が…戻んなくなっちゃった…」

紅綾は観音に縋り付くように言った。

「いつっもなら…すぐ、変わるのに…」

観音はそんな紅綾をそっと抱きしめ、頭を撫でた。ポンポンっと撫で続けると紅綾は少し落ち着いたようだった。

















「落ち着いたか?」
「…うん…」
「瞳の色が黄金から戻らないんだな?」
「うん…」
「俺がいつも言っていたこと覚えてるか?」
「う……え?」

“両方の力はなるべく均等に使えよ。そうじゃないと…”

「いつか片方の力を失ってバランスを崩すって…その顔だと忘れてたな、このボケ」
「いやいや、ちゃんと覚えてたって」
「ウソつけ。今ゼッテー目が点になってただろ!」
「そんなことないもん!!」

意地でも忘れてないと言い張る紅綾に観音はハァとため息をついた。

「とにかく、これからはちゃんと均等に使えよ」
「………約束はできない」
「まだ言い張るか。そうしないと、いずれお前はバランスを崩して壊れちまうんだぞ」
「それでも…まだ、私には覚悟がないの…」

グッと紅綾は拳を握った。

「それと、ちゃんと向き合うだけの覚悟が…」

俯きながら言う紅綾を見て観音はそっと頭を撫でた。

「観音…?」
「早くつくれよ」
「・・・?」
「覚悟ってヤツをよ」
「分かっ・・・っ!?」

その瞬間、紅綾はぺたんと座り込んでしまった。



「ア、レ?」
「どうした?」
「身体に力が、入らな・・・」

そのまま崩れ落ちそうになる身体を観音は慌てて支えた。

「紅綾…最後に休んだの、いつだ?」

観音の問いに紅綾は少し目を泳がせた。

「えっ…と、1ヵ月ま…」
「3ヵ月前だな」


そう言って観音は紅綾を抱き上げ、歩き出した。


「これから1週間、すべての任務を放棄しろ」
「ちょっ…そんなこと…」
「俺からの命令だ。絶対厳守。分かったな、闘神来羅紅綾」
「・・・はい、観世音菩薩…」




力なく返事をした紅綾を見て、観音は顔を歪めた。噂でも聞いていた。最近、紅綾の軍だけ出陣数と危険度が増した、と。





―――もっと早く気づくべきだった・・・






実際、紅綾が倒れるまで気づけなかった。観音は紅綾の部屋につくと、そっとベッドに寝かせた。すでに紅綾は規則正しい寝息を立てて眠っている。

「寝顔だけはガキだな…」

観音はそう呟いて布団を掛け直すと、静かに部屋を出た。





















“観世音菩薩、今の私の立場から言えるようなことではないのですが・・・あの子を、お願いします”

“何故俺に言う?”

“そりゃ、アナタが慈愛と慈悲の象徴だからですよ”

“目が笑ってるぞ”

“おっと、すいません。――とにかく、アナタだから頼むんです。あの子だけは、守ってやってください”




そう言って神であり、父でもあった1人の男は何千年にも及ぶ封印を掛けられた。



















母親の方は意地でも紅綾を手放さなかった。

当時、まだ10才にもなっていない紅綾を抱きしめて、最後の最後まで天界軍に抵抗した。しかし、その母親も封印され、紅綾は天界で闘神にさせられてしまった。観音が父親であった神の言葉を引き継ぎ、最後まで反対したにも関わらず、紅綾は闘神となり、身の丈程の刀を背負うこととなった。




この時からすでに紅綾の瞳の色は真っ黒だった。























「ちっ・・・」

今回、偶然にも紅綾の力のバランスが変わったからよかったものの、そうでなかったらかなり危険な状態であった。それでも首を縦に振らない紅綾にはため息しか出なかった。

「アイツの頑固さは誰に似たんだか・・・」











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