たとえるならブラックコーヒー

□はじめまして
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「ほら」

腕を精一杯伸ばして飲み物を渡すと、相手も精一杯腕を伸ばしてそれを受け取った。

「ありがとう、ございます…えっと…」
「あぁ、ジャン・ハボックだ」
「リア…ディクラフィー、です…」

2m弱離れたままの自己紹介。隣に住んでいながら、きちんと名前を知らないままだった。

「今日は軍服じゃないんですね」
「1ヶ月振りの非番だったんだよ。そっちこそ仕事は?」
「辞めました」

その言葉に俺は目を見開いた。ルナの話や2人の生活を見る限り、決して裕福には見えない。むしろ、苦しい生活を送っているように見えるのに。

「辞めたって…」
「あ、ルナには内緒にしておいてください。心配するといけないから」

そう言って笑うリアは、今にも壊れてしまいそうなほど儚く、弱々しいものだった。
でも、守りたくても、支えてあげたくても俺には近づくことすら………



…って何考えてんだ、俺?
たかが隣に引っ越してきた少し生活の苦しそうな姉妹に情が移ったのか?ルナのような人懐っこい子ならともかく、リアは暗いっつーか、なんつーか…

「…似てねぇ姉妹だな」
「それはよく言われます。私もルナも母親似ですから」
「…え?」

母親似なら似ているのが普通じゃ、と思ったところで思い出した。


“ママもルナちゃんのママとルナちゃんのおねえちゃんのママはちがうってゆってたもん”


「つまり、腹違いの姉妹…?」

俺の言葉にリアは小さく頷いた。

「私は本妻の子供でした。でも私が12才の時、父が急に赤ん坊と女性を連れて帰ってきたんです」

その赤ん坊がルナでした、そうリアは淡々と語った。




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