そんな馬鹿な
□#01 (貴女は 誰ですか?)
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「………」
私は、瞬きを繰り返す。
しかし何度瞬きをしても、自分の瞳に写るモノは…―――
「此処は、何処だ…?」
全くの見知らぬ部屋だった。
取り敢えず、今座っている処から立ち上がる。
落としてしまったシルクハットを被り直し、辺りを見回した。
…見知らぬ部屋だが、家具や部屋の雰囲気からして
女性の部屋である事は分かる。
(まさか、寝惚けて見ず知らずの女性の家に
上がり込んだ訳ではあるまいな…!?)
だとすれば、ただ事では済まない。
(兎に角、急いで此処から…っ)
グイッ
「?!」
何かにマントの裾が引っ張られた。
恐る恐る後ろを振り向くと、ベッドの上にちょこんと座り空いた手で目元を擦っている女性(少女?)が…
もう片方の手には、マントの裾がしっかりと握られている。
不味い。 とても不味い状況だ。
しかし此処は私、メフィスト・フェレス。
慌てた様子を表に出したりなどはしない。
「起こしてしまいましたか。
これはこれは失礼致しました。
さぁ、もう一度ベッドへお入り下さい、
アインス・ツウ゛ァイ……」
『めふぃ…すと…?』
その声に、思わずカウントを止めてしまう。
今、目の前の彼女は
何と言った……?
『あ、やっぱり…』
漸く目が覚めたらしい彼女は、団栗の様な丸い瞳をより大きくし
そして、私に飛び付いて来た。
『ホンモノのメフィストだぁ…!』
(貴女は 誰ですか?)
む、胸が、当たって……!!
…next.