□未練なんてないくせに
3ページ/5ページ

「いいよ。行く。あなた、妖でしょう?」

 ふっと笑って言ったら、男は小さく目を見開いた。

「へぇ。素直だね。そう、俺ぁ妖だ。」

間延びしたように言うその口調は嬉しそうだ。

「もっともっと強くなりたい。もっともっと強く強く・・・・」

そううわ言の様に言うと男はまた口を歪めた。

「いいねぇ。いいよ、いい。強くて尚、力に固執する奴は素質がある。」


嬉々として語る男。

「俺は火黒。お前は?」

「由愛。」

「由愛・・・ね。」

「ねぇ、火黒。」


呼びかけると、行きかけていた足を止めて火黒が振り返る。

「ん?」








次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ