夢小説


□筒抜け
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4月から入隊だという若い隊員に松本がピッタリと後ろから腕を回す形で教えている
それだけならば 松本を想う日番谷の胸のうちが乱される事はなかった

が その松本が指導してる隊員は
髪の色や口調は違っているものの雰囲気や背丈、顔やサラサラした髪が似ていた

そう 松本がずっと縛られ続けた…
いや 松本の前から去った今でも縛り続けている 市丸ギンその人に

日番谷の心はぐるぐると渦巻いているようだった
色々 思い出された
傷つき苦しんでいる松本の姿
手を伸ばして 支えてやりたくても
松本は「大丈夫ですから」と腕をすり抜ける
歯がゆかった
隊長なのに
こんなに松本を想っているのに
でも 傷付いた松本にこれ以上負担はかけられない
きっと 自分の想いは松本に負担になるのだと
抑え続けてきた日番谷だった

目の前にいるのは市丸ギンではないと頭ではわかっているのに 心は乱れるばかり

「…たぁいちょ?ちょっと 大丈夫です?」

いきなり目の前に現れた松本にビクっと肩を持ち上げる

「っ!!うわっ なんだ松本!」

「なんだ!じゃありませんよ。まったくぅ 今日はあたしばっかり指導で疲れちゃいますよぅ」

と額の汗を拭う松本を日番谷はチラリとうかがう。

(松本は何とも思ってねぇのか?)

「お前 事務的な仕事一切しねぇんだから 隊員に稽古くらいつけろ」

言いたい事とは全く違うセリフが口から飛び出る
そんなぁ と言った松本の視線が隊員に向けられている
その横顔がやけに寂しそうに見えたのは
日番谷の気のせいか

「…はぁ いいですよぅ。やりますよぅ」

とまた 戻って行こうとする松本に日番谷は何故か慌てた
まるで市丸の元へ戻ってしまうようなそんな気持ち
日番谷自身も自分の気持ちに動揺した

「いや まて。
そろそろ 軽く試合でもさせよう」

その言葉を合図に隊員達がわらわらと集まってくる
やはり目につくのは市丸に似ている隊員
近くで見れば見るほど市丸に似ている
松本をまた軽く見るが普段と変わらない

(俺の気にし過ぎか…)

「これから 軽く試合でもしてもらう どれだけの腕か軽く見せてくれ」

と新入隊員を日番谷が見れば
皆 「はいっ」 と勢い良く返事を返す

「始めっ」

三席の掛け声と同時に始まった
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