願望小説

□新しい生活
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十番隊に戻ったが
未だに体調が良くならない乱菊は
給湯室で深いため息をついた

「もう当分 魚は食べたくないわね…」

うっぷと口に手をあてる
日番谷が心配そうに乱菊を見た
「おい松本 もう上がって良い 四番隊へ寄ってから帰れ」

「…でも」

「変な流行り病で移されたら たまんねぇからな」

日番谷は乱菊を見ず
書類に目を通しながら言った

「冷たいですねぇ たいちょ」

乱菊はシュンとして
良いですよぉ どーせあたしはバイキン副隊長ですよぉ
そうブツブツ呟きながら帰り支度を始めた

「はぁ〜…俺はともかく
ひなたに移ったら可哀相だろ」
「ぢゃぁ 最初からそう言ってくれたら良いのに」

乱菊は未だシュンとしている

「ったく…あー!
悪かったよ!」

日番谷はボリボリと頭を掻いた
乱菊はニッコリ笑って

「良いんですよぉ
うふふ 同じ風邪引いたら変なうわさ
流れちゃいますもんねっ♪ 」

「んなもん 流れねーよ!」

日番谷は乱菊をキッと睨むと
隊首室から乱菊をほおりだした
「んもぅ♪たいちょってば
照れちゃって可愛い♪」

乱菊は足を四番隊へと向けた
途中 愛しい霊圧を感じ足をとめた

「……ギン?」

「なんや 乱菊 またおサボリかいな」

「あんただけには言われたくないわね」

乱菊は髪をかきあげ 木の上に居たギンを
見上げようとしてよろめいた

「?!どないしたん?」

ギンが乱菊の異変に驚き
1秒もかからず高い木のてっぺんから
さっと降りてきて乱菊を支えた
「…ちょっと 具合い悪くて
変な病気だと困るから四番隊に…
って ギン聞いてるの?」

ギンは何とも言えない顔で
乱菊を支えたままの姿勢で居る
「乱…病気やないと思うわ」

「は?あんたいつから医者に…」

乱菊が言い終わる前に
ギンは乱菊の手をとり乱菊の腹に当てた

「??」

「感じてみぃ。ココ」

言われた通り意識してみれば
かすかな…
でもしっかりとした霊圧が感じられる
それは自分のものとは 明らかに違って

「…わっ!えっ?」

「そうみたいやな 乱菊 おめでとさん」

ギンはにっこり笑った
乱菊もまた同じ表情になっていた

「うわぁ ビックリね!」

「そやねぇ また小さいライバル出現やわ」

とりあえず 診てもらわなきゃ という事で
四番隊へ行けば
やはり予想通り
乱菊の腹の中には新しい命が宿っていた

「そうですね…4ヶ月…
5ヶ月に近い感じですよ
気づかなかったのですか?」

少し責められるような言い方を卯の花にされ
乱菊はえへへと笑った

「その…死神同士で子どもできるなんて
稀みたいですし…
全然…」

「一度妊娠すれば 子どもを受け入れやすい
子宮になるんですよ…」

しらなかったんですか?
とまたしても卯の花の怖い笑みに
乱菊は縮こまった

「す…すみません」

「今回はひなたくんとは
また違った妊娠です…
充分に気をつけて下さい」

「…と言いますと?」

「これです」

と卯の花はまたエコー写真を乱菊に見せた
懐かしいその白黒なエコー写真を見て乱菊は
目が点になった

「…あの これ 二つ…」

「そのようですよ 双子…という事になりますか」

えーー!

乱菊は元々大きな瞳を更に大きくさせ
パチパチさせた

「多胎児は母体にも胎児にも
負担がかかるんです
極力 仕事は控えた方が良いですね」

「はい…じゃぁ とりあえずおとなしくしてみます」

乱菊はありがとうございました と頭を下げて
廊下で待っていたギンの元へ向かった

「ギン 聞こえた?」

「ん?何のこっちゃ」

「双子だって…」

「?うん?乱菊の腹触った時から
気付いとったで ボク」

えーー!

と乱菊はまた瞳をパチパチさせた
「乱菊は気づかなかったん?
霊圧二つあったで」

「そ…そう…」

乱菊は苦笑いした

「これから 大変やね いきなり子ども三人て…
乱菊の夢 ほんまに叶ったな」

「うん…でも双子なんて 大丈夫かしら?」

「ボクも居てるから大丈夫。
ひなたが大変やね いきなり下に二人もできて」

「そうねぇ」

乱菊もそれが一番気になっていた
一人でも大変なのに
二人…ひなたが寂しい思いをしないか
それが心配だった

「まぁ 大丈夫やろ
ひなたを当分は一番にしたったら良いんちゃう?
ってか ボクが一番蔑ろにされるんは
目に見えとって いややわ」

ギンの冗談に乱菊は笑った

「ふふ…そうね」

「ボクかて 乱に甘えたいお年頃なんやけど」

ギンはヘラリと笑って乱菊を抱きしめた
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