夢小説


□雨が好きな理由
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僕は雨が嫌い

カビ臭いし
僕の念入りにセットした髪が乱れるから

…でも

あの日、僕は雨が好きになった

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今日は虚討伐の担当は十番隊だったけど。
でも 要請がきて 何故か僕が駆り出された
大嫌いな雨が朝から降っているのに

虚の数が多くて
日番谷隊長がたまたま休暇で居なくて

……ほんと最悪。

森の中 雨でぬかるんだ土が
死覇装に跳ね返って
舌打ちははしたないとわかってても
勝手に口から出てくる

虚は力は大した事なくて
八つ当たりに近い感情で斬っていけば
あっという間に倒せた

僕…来る必要無かったんじゃない?

雨ですっかり濡れた前髪を払えば
水が顔を滴り落ちる

十番隊の隊士の安否確認を
十一番隊の隊士にさせて
さっさと帰ろうとすれば
十番隊 副隊長の姿が見当たらない

「松本副隊長は?」

「わかりません…」

誰も知らないって…

胸騒ぎがして霊圧を探れば
近くに感じる 彼女独特の霊圧

「ちょっと行ってくるから
あと任せる」

瞬歩を使って木々の間を抜ける
また 泥が死覇装に跳ね上がってイライラする

に弱っても居なさそうだからと
瞬歩をやめ ゆっくりと歩を進める

木々の間から見える
金髪

「乱菊さ…」

声をかけようとして
ハッとした

その横顔に伝うのが
雨だか涙か区別がつかなかったから

彼女は雨のせいで低く見える空を
悲しそうに見つめていた
雨なんか 全然気になってない様子

綺麗な金髪は濡れ
更に美しさを増し
死覇装は彼女の肌にピッタリとくっついて
豊満な胸を更に際立たせていた
それは息を呑むくらい

美しい立ち姿で
この世のものとは思えないくらいだった

そんな僕の視線に気付いて
ゆっくりと彼女は僕を見た
その瞳があまりにも綺麗で
僕は息をのんだ

「……弓親?」

「こんなに美しいのは
僕以外有り得ないでしょう」

見とれていたなんて 気付かれたくなくて
口をついて出るのは裏腹な言葉

「早く戻りましょうよ
雨も滴る良い男がわざわざ探しに来たんですから」

そう言えば 彼女は寂しそうに笑った

「あんたも言うわねぇ」

「当たり前の事を言ったまで…ですけど?」

我ながら可愛げが無いと思う

彼女が空を見上げていたのはきっと
市丸の事を思っ
て居たんだろう
雨のせいで近くに見えた空
その空に居るであろう市丸
そんな二人の距離は縮まる日なんて
この先 絶対に来ないのに

でも 彼女はずっと待っているようだった

「待っていても゛彼゛は来ませんよ…」

「……え?」

自分が何を言ったのか
一瞬わからなかった

「あ…いえ。日番谷隊長は非番ですから」

なんとも苦しい言い訳
自分でも恥ずかしくなって
彼女から目をそらした

「…そうね…
待ってても゛彼゛は来ないわね」

彼女は笑っているのか 泣いているのか
わからない顔をして言った
僕は何故か強まった雨が
彼女と彼の涙のように思えた

ゆっくりと歩く彼女に合わせて
僕もゆっくり歩く

「ありがとう 弓親」

「何がですか?虚討伐 今度替わって下さいよ」

「うん…」

何時もなら ふざけないでよ と返ってくるはずの返事も
今日は違っていて
調子が狂う

彼女は今は下を向きながら
ゆっくりゆっくり歩く

「あーもう!遅いっ!」

僕は彼女の手をとった

「あ…え…っ?」

「さっさと行きますよ
僕 雨好きじゃないんだから」

乱暴にセリフを吐き捨てて
前を見


「ごめんね 弓親」

彼女は細い指をギュッと
僕の手に絡ませた

「謝ったり お礼を言ったり
忙しないですね」

彼女の手があまりにも冷たく細くて
あんまり他人事に興味ない僕が
…この手を離した市丸が
少しだけ憎く感じた

「弓親って意外と男らしい手してんのね」

笑って話す彼女が
今までに見た事ないくらい可愛くて
ただのお色気破天荒美女かと思っていたのに

意外な一面を見て
僕の心の奥底何かが疼いた

「意外と女性らしいんですね」
「はぁ?意外とって何よぉ」

と言いながら 耳まで真っ赤にして
こんな可愛い所も市丸は知っていたのだろうか

「僕は あまり人を褒めないけど
乱菊さんにはもっと良い男が似合うと思います…」

僕の発言に目が点になってる
が。ふっと笑って

「あんたに言われると 微妙ね」

…………やっぱり可愛くない

でも そのあと強く握り返された掌
僕も少しだけ力を入れて

「僕の美しい手を壊さないで下さい」

そんな僕も可愛くない

彼女の一面を見れた雨が

僕はほんの少し好きになった
 

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