夢小説


□友達以上恋人未満
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なぁ

女なら泣けよ

市丸ギンが死んで
残されたアイツは痛い程の空元気を見せた
アイツのとこの隊長は
幼なじみしか目に映ってなくて
深く傷付いたアイツの心に
気付いてやれてなくて
誰もが松本の空元気に気付いてやれてなくて

アイツが

アイツの逃げ場が

何処にも無い事に気付いた

そしたら
俺が…そばに居てやんなきゃなんねーかな

なんて柄にも無い事思ったりしてた
気付いたら 一緒に飲みに行った帰り道
松本を後ろから抱き締めてた

「っ!!一角?」

松本は慌てて振り返ろうとした俺は腕に力を込めて
振り返れないようにした

「なぁ松本。
お前も女だろ」

「はぁ?あんたね どこに目ついてんのよ」

この胸を見てみなさいよと松本は
俺の腕の中でゼスチャーしてみせた

「辛いんなら 辛いって言えよ 泣きたいなら 泣きゃぁ良いぢゃねーか」

「!!!!」

「お前市丸の事で深く傷付いてんだろ
無理してりゃぁ 体の傷と同じ
治る傷も悪化するんだぜ」

「…戦闘馬鹿のあんたに言われたくないわよ」

松本の表情を見たくて
腕を解こうとすると
今度は松本が俺の腕を押さえた

「一角…」

「なぁ 松本 お前が
泣いたり 辛いって言っても
俺はお前に変に
気ぃ使ったりしてやんねーし
俺には関係ねーから
気にせず泣けよ」

「ふふっ。何よ それ
優しく無いわね」

松本は笑った…様に感じた
が いきなりクルッと俺の方へ振り返り
ギュッと俺の胸元を掴んで
俯いた

「ちょっとだけ…
少しだけで良い 泣かせて…」

「言っただろ
お前が泣いたって 俺には関係ねー
だから 思いっきり泣けよ」

それから 松本は糸がプツリと切れたように
嗚咽を堪えずに
肩を震わせて 泣いていた

こんな風に泣くのか

なんて 冷静に思ったり
でも 松本の泣き声が
俺の鳩尾あたりをぐるぐるかき混ぜている
そんな感じがした

松本が泣き止んで
ハンカチで涙やら鼻水やらを
拭いている

「ハハハ!お前今すげーブスだぜ!」

「なによぅ 泣き顔が可愛くなくて
悪かったわね!」

松本は泣きはらした真っ赤な目と
真っ赤な鼻を隠そうともせず
俺に悪態をついている

「まぁ 俺には一切関係ねーよ」

「一角…あんた
優しいのね…」

あたしを良くわかってくれてて…

松本はまた

フワリと俺の胸に飛び込んできた

俺もまた
松本を腕の中に閉じ込めた

松本も俺も
何も言葉を発しなかった

俺の体温で松本の心の奥の傷が
少しでも 塞がれば良い

そう思って
松本を抱き締める腕に
少し力を入れた

end―

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