願望小説

□新しい生活
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まず 初めに十番隊へ顔を出した
隊士達は乱菊とひなたを見つけると
笑顔で駆け寄って来てくれた

「副隊長!御加減はいかがですか?」

「この通り もうパンパンよ!」

乱菊が笑えば
隊士達も笑った

「松本!」

聞き慣れた声に振り向けば
日番谷が立っていた
ひなたは駆け寄り抱きついた

「ひなた!お前 また大分成長したな!」

わしわしと頭を撫でられひなたは
満面の笑みを浮かべた

「たいちょ!何して遊ぶ?」

「コラ ひなた。
ダメよ!あんたはお母さんと一緒に
四番隊に行くの!」

「検診か?」

「あ…はい。ひなたが診てもらった方が良いって」

乱菊の言葉に日番谷は少し不思議そうな顔をした

「じゃぁ さっさと行ってこい
ひなたは見ててやるから」

「え…でも…」

「仕事なら大丈夫だ」

「やった!お母さん はよ行かんと」

「もう…絶対良い子にしててよ?」

「わかっとるよ」

ひなたはもう ひしっと日番谷の手を握っている
乱菊は後ろ髪を引かれながら四番隊へと急いだ

「卯の花隊長居るかしら?」

四番隊の隊士へ声をかけていると
勇音がやってきた

「乱菊さん!うわぁ またお腹大きくなりましたね!」

「勇音!流石にキツくなってきたわ」

「今日は検診じゃないですよね?
どうしたんですか?」

乱菊は事情を話すと勇音の顔が曇った

「そうですか…
それは気になりますね
私で良ければ 卯の花隊長が来るまで
少し診ますよ」

「じゃぁ お願いしちゃおうかな
何でもなければそれで良いから」

診察室で乱菊は膨れ上がった腹を出した
失礼します
と言って手を翳す勇音
明るい顔とは言い難く
乱菊は不安にかられた

「ちょっと 勇音?
その顔…怖いんだけど…」

「あっ…すみません!
やっぱりその…ひなたくんの言ってる事
あながち間違いでは無さそうです」

真剣に翳す手から暖かいものが 乱菊の腹に流れてくるような感じがした

「あらあら 勇音…
そんな言い方では乱菊さんが
不安になってしまいますよ…」
いつから居たのか
卯の花がいきなり話出したので
乱菊も勇音も肩をビクつかせた
「あら?驚かせてしまいましたか?」

「「卯の花隊長…」」

ニッコリ笑いながら 乱菊のベッドに
卯の花がゆっくり腰をかけた

「双子では稀にあるんですよ
栄養が偏ってしまう事が。
弱い方より強い方を生かそうとする
母体の自然の摂理です」

「えっ?じゃぁ…」

「いえ…今 勇音が治療していますから命は大丈夫です
…が、残念ながら一時凌ぎに過ぎないのです」

乱菊は不安の波に押し潰されそうになりながら
卯の花隊長を見た

「もう 出してしまった方が良いでしょう
リスクはありますが
お腹に入れておくよりはリスクは少ないかと…」

「…え… でも もう一人は?」
「大丈夫です
そちらは そうですね…もう1800はありそうですから」

卯の花も乱菊の腹に手を翳しながら言った

「小さい方は…?」

乱菊は自らの声が震えている事に
驚いた

「そうですね…1000あるか 無いかくらいでしょうか」

「そんなに小さいのに…」

乱菊は取り乱さないように
深く深呼吸した

「大丈夫ですよ 今晩なら勇音も居ますし
安心して下さいね」

「今晩??!!…ですか…」

「早い方が良いと思いますが」
「…はい じゃぁギンに…」

乱菊が起き上がろうとすると
それを勇音が制した

「私がして来ますので
乱菊さんは勇音の治療を赤ちゃんの為に
続けて居て下さいね」

卯の花はそれだけ言うと笑顔で
診察室を後にした

暫くしてギンがやってきた

「ギン…どうしよう…」

眉間にシワをよせる乱菊にそっとギンが寄りそった

「卯の花隊長はんと勇音ちゃんが
大丈夫言うてるなら大丈夫やろ
こういうんはお医者さんに全て任せんと…ね」

ギンは勇音の邪魔にならない程度に
乱菊の腹に手を置いた

「ボクはお医者さんやないから
詳しいんはわからんけど
生きようとしとるんは感じるで」

「ギン…ずっとそばに居てくれる?」

いつもは微塵も見せない乱菊の弱さに
ギンは頷いた

「えぇよ ずっとそばにおる」

ギンは乱菊の髪を優しく撫で
おでこにキスをした
その労るようなキスに勇音が赤面しながら
「お二人が羨ましいです」 と小さく呟き
乱菊は笑った

「ひなたは?」

「卯の花隊長はんの話 聞いとる時に
たまたま阿散井くん達もおってな
今晩は泊めてくれる言うてたから」

「そう…悪いわね…」

「ひなたは大喜びやったけどな」

それが想像できて
また乱菊は笑った
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