SeventhBloodVampire
□killing me softly
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祓い手とは、
いかなる時も冷静かつ迅速に判断を下し、行動に移さなければならないのだ。
銀髪の少年もまたそのように教育され、実戦を重ねてきた一人である。
しかし今、危機的状況にも関わらず、彼は呪いでもかけられたように、身動きが取れずにいた。
(ヤバイ。これは、かなり、ヤバイ。)
少年が食い入るように見つめる一点。
そこには、一人の少女の姿があった。
彼女は、清潔感のある柔らかそうなベットに身を沈め、すやすやと寝息をたてている。
その傍らに設けられた、小さな椅子に腰掛けている少年の喉が、ごくりと鳴った。
きつく握りしめた両の手に、じんわりと汗がにじんでくる。
単に寝相が悪いのか、はたまた暑さで無意識に追いやったのか。
彼女が就寝時被っていたと思われる毛布は、現在ベット脇に追いやられ、くしゃくしゃと丸まっていた。
その状態で、彼女が着ている白いワンピースの裾が大きくめくれ上がり、ふとももまであらわになっていた。
細く汚れのない脚は、時折、少女の寝返りに合わせて、誘うように左右に交差した。
(あー、来るんじゃなかった…)
一時間ほど前、長引いた仕事もようやく終わり、フレディは帰路に着こうとしていた。
空にはすでに星がちりばめられていた。
(もう、夜か…)
仕事の緊張感から解放された代わりに、極度の疲労感が彼を襲った。
「…あ」
その時浮かんだのは、愛しい少女の顔。
今日の内に、面倒臭い仕事は片付けたから、明日は大分ゆっくりできる。
「もう起きてるかな、ねえちゃん…。」
つかの間の安らぎと癒しを求め、彼は少女のいる居住区へと足を運んだ。
央魔であるレナの居住区には常に護衛がいるのだが、次期大老師となる身であり、彼女を発見し保護した張本人でもある彼は、ほとんど顔パスで通過することが出来た。
これは決して職権濫用などではないと、少年はいつも自らに言い聞かせていた。
レナの部屋の前でフレディは何度か扉を叩いたが、返事はなかった。
「おーい、ねえちゃん?」
いつもなら起きている時間なのに、部屋の中からは物音ひとつしない。
「……ねえちゃん!?」
不安がよぎり、とっさにドアノブに手をかけると、カチャリと音がしてノブが回った。
鍵はかかっていないようだ。
フレディが思いきり扉を開けると、視界に入ってきたのは、あられもない姿で寝ている少女の姿だった…。