SeventhBloodVampire

□killing me softly
1ページ/3ページ

祓い手とは、
いかなる時も冷静かつ迅速に判断を下し、行動に移さなければならないのだ。

銀髪の少年もまたそのように教育され、実戦を重ねてきた一人である。

しかし今、危機的状況にも関わらず、彼は呪いでもかけられたように、身動きが取れずにいた。


(ヤバイ。これは、かなり、ヤバイ。)

少年が食い入るように見つめる一点。

そこには、一人の少女の姿があった。


彼女は、清潔感のある柔らかそうなベットに身を沈め、すやすやと寝息をたてている。


その傍らに設けられた、小さな椅子に腰掛けている少年の喉が、ごくりと鳴った。

きつく握りしめた両の手に、じんわりと汗がにじんでくる。

単に寝相が悪いのか、はたまた暑さで無意識に追いやったのか。

彼女が就寝時被っていたと思われる毛布は、現在ベット脇に追いやられ、くしゃくしゃと丸まっていた。

その状態で、彼女が着ている白いワンピースの裾が大きくめくれ上がり、ふとももまであらわになっていた。

細く汚れのない脚は、時折、少女の寝返りに合わせて、誘うように左右に交差した。

(あー、来るんじゃなかった…)

一時間ほど前、長引いた仕事もようやく終わり、フレディは帰路に着こうとしていた。

空にはすでに星がちりばめられていた。

(もう、夜か…)

仕事の緊張感から解放された代わりに、極度の疲労感が彼を襲った。

「…あ」

その時浮かんだのは、愛しい少女の顔。

今日の内に、面倒臭い仕事は片付けたから、明日は大分ゆっくりできる。

「もう起きてるかな、ねえちゃん…。」

つかの間の安らぎと癒しを求め、彼は少女のいる居住区へと足を運んだ。


央魔であるレナの居住区には常に護衛がいるのだが、次期大老師となる身であり、彼女を発見し保護した張本人でもある彼は、ほとんど顔パスで通過することが出来た。

これは決して職権濫用などではないと、少年はいつも自らに言い聞かせていた。


レナの部屋の前でフレディは何度か扉を叩いたが、返事はなかった。

「おーい、ねえちゃん?」

いつもなら起きている時間なのに、部屋の中からは物音ひとつしない。

「……ねえちゃん!?」

不安がよぎり、とっさにドアノブに手をかけると、カチャリと音がしてノブが回った。

鍵はかかっていないようだ。
フレディが思いきり扉を開けると、視界に入ってきたのは、あられもない姿で寝ている少女の姿だった…。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ