陰色の陽
□夢回す銀槍 part3
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静まりかえった校舎に、チャイムの音が鳴り響いた。時刻は午後三時を過ぎ、これから六時間目が始まる。
「せやから、何でもっとはよぉ連絡よこさへんかったんか聞いてんやろ?」
生徒の一人もいない廊下で、陰璃が一人携帯で会話をしていた。携帯の向こうの人物はクスクスとい含み笑いを発している。陰璃はその声にむぅっとなりながら、半分怒鳴るようにして会話する。
「笑うなや、このショタコン+シスコン=変態が」
『随分とひどい言い草だね』
電話の相手は土師圭吾。
陰璃の所属する東中央支部長を務めている青年。そして、陰璃が嫌いだと思う人物で、会う度に火花を散らしている。
「実際そうなんやから、ひどくも何ともあらへんわっ」
『全く…僕はどこで君の育て方を誤ったかな』
「あんたに育てられた覚えはアリマセンっ」
陰璃の足は、瓦礫と化した美術室へと向かっている。
陰璃はそこで、自分の仕事のパートナーなる人物と待ち合わせをしているのだ。
声をできるだけ抑えつつ、美術室のある東棟の階段を、癖で足音を消して登っていると、何かが揺れた気配がした。
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