陰色の陽
□夢回す銀槍 part4
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「オレたちは虫憑きで、ここの生徒に大怪我を負わせたのはこいつだよ」
「……!」
「え?」
こいつと言われた陰璃は一瞬きょとんとしたが、別にどうでもいいという感じだ。
「―――もしオレがそう言ったら、お前はどうするってんだ?そんな棒きれ一本で、悪者を成敗しようとでも考えてたのか?」
「はははっ。そりゃおもろいなぁ」
「そ、そんなんじゃないわよ」
「じゃあ、なんだよ?」
「もしかして、自分に会いに来てくれたとかぁ?せやったら早ぉそう言って―――」
「お前は少し黙ってろ」
言葉を遮り、大助は自分よりも少し目線の高い陰璃を睨む。陰璃は「はぁい」と緩い返事を返すと、特に反省もせずに口を閉じた。
「知りたいことが……あったから」
亜梨子はわずかに目を伏せ、言う。
「虫憑きに会って、どうしても確かめたいことがあるの。だから私は、虫憑きを探してた。一年前から、ずっと……」
ふたりは黙り込んだ。だがすぐに口を開き、冷たい声音で亜梨子を突き放す大助を横目に、陰璃はふと視線を上げた。その視線は亜梨子の背後に向けられている。
その視界には確かに、銀色のモルフォチョウが捕らえられていた。陰璃に取り憑くタランチュラも、そのモルフォチョウに反応を示している。
あのチョウ、“これ”と同じ……?
だが、その考えはすぐさま頭の中から消え去った。モルフォチョウから感じる雰囲気と、タランチュラの雰囲気が、確実に違うからだ。
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