血喰う獣神
□はじまり
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―――テセアラ メルトキオ 貴族街―――
にぎやかな町並みを見渡せる大きな屋敷の屋根の上。
真っ青な空に羊みたいな白い雲がフヨフヨと浮かんでいる。そよそよと心地よい南風が漆黒の髪をやさしく撫でる。
(いやな夢を見た・・・)
心地よいほかほかとした天気の中、意識が再び夢の中に落ちようとうとうとし始める。先ほど開いたばかりのまぶたを再び閉じる。まぶたを閉じてもまだ少し明るい景色は少しうっとうしかったが、あまりいやではないうっとうしさだった。
「モルテ―――w!!」
「ぐふぼっ;;!!?」
そしてほとんど意識が沈んできたころ、腹部に大きな衝撃を受けた。腹部に視線を移すと、そこには紅い色と桃色のあいつが猫のようにごろごろと動いていた。
ふわふわとなびくその紅は今すぐにでも触りたいと思うのだが―――
「ゼロ・・・ス・・・・・・;;」
「ん?」
「・・・な、内蔵・・・吐き出す・・・;;」
「そんな簡単にでるわけないでしょ!」
「いっ・・・いいからどけ;;!!」
腹部に乗っているゼロスの襟首を掴んで自分の上からどかすと、バッと起き上がりまだ少し痛む腹部を押さえる。
「そんな思いっきり飛び込んでないんだけどなー?」
「いや;;飛び込むこと自体がおかしいんだが・・・;;」
「気にすんなって!でっひゃひゃひゃ!」
はぁ・・・っとため息をこぼすとさらにゼロスが後ろから抱き着いてくる。ゼロスはそのままの体制で不満そうな声で話しかけてくる。
「なぁ、本当に今日からいっちまうのかよ〜?」
「あぁ、あの話か・・・」
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