宝物・捧げ物

□きみ を よぶ
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『帽子屋』(旧HausmarcheN:U)
10000HITフリリク
『独り遊びに悪魔と玩具』より





彼に借りっぱなしのものがある。返す気なんてさらさらないけど。


『クロロはいいね、盗めるから』

「何だ?蜘蛛に入る気になったか、エルリア」

『違うよ、念の話。あたしは借りるだけだから返さないといけないんだもん』

リビングの白いソファに仰向けで横たわってあたしは突然の訪問者に声をかける。部屋に充満する絵具の匂いと鉄臭い血の香りに少しだけ眉をひそめた彼は落ちていた毛布を黙ってあたしに掛けた。


「そんな格好だと風邪をひくぞ」

『あたしは学がないからひかないよ』

「お前は利口だよ」

くしゃりと髪を撫でてくれる彼の手を掴んだらその手首が赤く色づいた。あたしの掌は汚れている。それは床に落ちている血みどろの衣服達が十分すぎるくらいに物語っているけど。


「仕事だったのか?」

『んー。さっき帰ってきたとこ。まさかこんな夜中に来るとは思わなかったよ』

「お前の顔が見たくなっただけだ」

『あはは、クロロってば優しい』

にゃははと笑ってあたしは彼の腕に指を滑らせて玩具にする。クロロもクロロでそんなあたしに呆れているのか、あたしの寝転ぶソファに腰掛けて黙ったまま。





今日は仕事だった。

相変わらず派手に獲物を始末したあたしは全身に血を浴びていて、帰ってきて早々に服を脱いで下着姿のままでソファに寝転んでいた。そこに訪れたのが、クロロ。

『何にも反応されないと逆に自信なくすんだけど』

「何がだ」

『身体』

「そのために来たんじゃない」

『じゃあどうしたの?』


彼の指に自分の指を絡ませたりして遊びながらあたしは問いかける。

うちに来る時はいつも髪を下ろして白いバンダナを額に巻いて刺青を隠しているけれど、今日はバンダナもしていないし髪の毛もオールバック。いつものあの逆十字を背負ったコートを着てる。団長モードだ、近くで仕事だったのかな。










「エルリア…俺に念をかけたか?」










びりびりとした威圧感がくすぐったい。



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