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『あやめの過去を詳しく探れ』


団長が出掛ける前に置き土産で置いていった仕事に全くと言って進展が無い

簡単に調べた時も名前と家族構成くらいしかHITしなかったけど、こんなに難航するとは思わなかった。

どんなに調べても経歴が出てこない。
ゾルディック家の地元の観光協会がやってるホームページには現家長の亡くなった兄の娘で敷地から滅多に出ない深窓の令嬢として紹介されていた

まる2日調べて出てきたのはそのホームページに記載されている簡単なプロフィールと国際人民データ機構に登録されている生体データと国民番号くらいだ。
身元は分かっているので軽く構えていたが難航している、あまりにも情報が少なすぎるのが逆に怪しくてデータ改ざんの形跡を探ってみたが怪しい所がない

ここまで調べて出てこないと言う事は本当に何も情報が出回ってないか、それともオレくらいの腕の持ち主があやめの後ろについて足跡を残さず情報を消しているかだ

存在が不確かな物を調べるいつもの調査と違ってあやめに直接聞いた方が早い、蜘蛛の活動とは関係ないのだから実りのない調べ物を中断して頼まれていた携帯のカスタマイズに戻ろう

帰宅予定の三日目だから今夜中に戻ってくるはず、出来上がった携帯を見て喜ぶあやめの笑顔を思い浮かべると自然と顔が緩む








まだかまだかと帰りを待っていると時間は既に夜中の2時を回っている、皆はそれぞれホームを出て行ってしまったのでオレひとりで暇を持て余していた、時間潰しにやってるゲームも気が散ってミスの連続

時差を考えてもそろそろ戻って来るはず。数分刻みで確認している腕時計に目を落とすと階下に人の気配が現れた
急いで階段を駆け下り広間を覗くとやはり団長とあやめ

ただいまと振り向くあやめから香るシャンプーの匂いが鼻孔をくすぐる、出迎えのハグの振りして抱き締め髪に顔を埋めしばし香りを堪能

「おかえり、遅いから心配したんだよ」

「熱烈なお出迎えありがとう。危険な所に行ってる訳じゃないから大丈夫だよ」

心配していたのは場所じゃなくて同行者。
この三日で二人の距離が近付いてるのではないかとそればかりが頭を締めていた

「団長に苛められなかった?」

「シャル、頼んであったものはどうなった」

三日もあやめを独り占めしていたくせにこのタイミングで割り込んでくるなんて酷いんじゃない?

あやめの肩越しに見ると団長モードの雰囲気を出してるつもりだろうけど僅かに眉間にシワが寄っている
仕事の時はどんな不測の事態があろうとも眉ひとつ動かさない男がこんな些細なスキンシップに何を焦っているのか

「ちゃんと調べてあるよ、期待に添うような事は出て来なかったけどね」

「必要かどうかは俺が決める、早く見せろ」

見せろって言われてもプリントアウトしてないんだよね、印刷したって10行に満たないから口頭での報告で十分だと思っていたし…

「…私先に部屋に戻るね。シャルおやすみ」

『あやめの経歴』を本人の前では流石に報告できなくて頬を掻きながらチラッとあやめを窺うとニコッと笑い広間を出て行った

仕事関連の話と読んでさり気なく席を外してくれるなんてなんて気が利くんだろう、ある程度お互いのパーソナルスペースを守るって付き合っていく上で大事だよね

んっ?部屋に戻るって…重大な事忘れてた!
戻るのって団長の部屋だ!
折角の時間をなんて無駄にしてたんだろう、調べ物なんて適当に終わらせて空き部屋の修復しておくんだった!

「あやめ!ちょっと待って!」

「シャル、早くしろ」

一歩足を踏み出した時に後ろから聞こえてきた声に静止させられる

声色から判る、団長は絶対勝ち誇った笑みを浮かべているに違いない

絶対直ぐに振り向いてやるもんか!





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