You change the world.
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薄暗い中、ザクザクと土壁を崩す音だけが響く
飽きもせず私の後について回るクロロは少し離れた場所に壁を背にして座り読書をしているのだが時々視線を向けてくるのを感じる
朝食時に言われた好きなように行動して良いとの言葉通りに動いてるのだが見られてると落ち着かない
「本なら部屋で読んだら?」
「俺のことは気にするな」
「そう言われても気になるよ」
手を止め振り向くと直前までこっちを見てたくせ本に視線を落としている
私が視線に気づいてると知ってるくせにあくまでも素知らぬ顔を貫くつもりなのか
「見てて楽しい?」
「あぁ、気付いた事があるしな」
やっぱり見てたんじゃない
「何?もう隠してることは無いけど」
「そうか?…因みにその周はいつまで続けるんだ?」
気付いたって私のオーラの事ね、時計を見るとお昼近い
朝食後子ども達を学校に送り出してすぐに始めたからかれこれ3時間、ある程度の能力者ならこれ位余裕だと思ったけど違ったのかな?
「もうお昼ね、疲れたしそろそろ休憩にしようか」
「疲労の色なんて見えないぞ」
「そんなことないよ、腕だってフラフラ」
手にしていたスコップを壁に立てかけおどけて手を振ってみたけどクロロの瞳からは疑いの色が消えてくれない
「疲れてたとしてもオーラの量が一定に保たれてるのは何故だ、綺麗に保たれ過ぎじゃないか?」
オーラを押さえ込み一定に保つのが当たり前になっていたから突っ込まれるまで忘れていた
そこまで観察されているのに気がつかなかった自分の失敗
「クロロだってこんなもんだと思うよ」
「ぶっ続けで3時間なんて最近はやってないから分からないが、そんなもんか?」
「じゃぁ午後からやってみる?」
「遠慮しておくよ」
立ち上がり出口に向かってくれたので気づかれないように息を吐く
どんなに鍛えてもこれ以上向上することのない基礎力。念が無ければちょっと体力のある力持ちの部類、アームレスリングの大会くらいは優勝できるかもしれないけど所詮そんなもの。
それを補うオーラの総量は今では私自身も把握できていない、弱く見せて油断させるのも作戦で念修行の一つとして常に纏うオーラを押さえほどほどに保つ訓練をしてきた
滅多に解放する機会もないし、普段意識する事が無く警戒が薄れていた
オーラ量が戻ったのは嬉しいが、敏感なクロロにヒントを与えてしまったのを悔やみ唇を噛む。
切り札だけは気づかれたらマズい、今のところ好意的な旅団だけどこれからどう転ぶか予測出来ない。
近い世界で生きているからいつ現場が重なるか分からないし、目的が違ったとしても旅団の方針なのか襲った現場で生存者の情報は出てこなかった事からバッティングした時は対峙しなくてはいけないかもしれない。
あくまで予想の範囲だけどこれ以上能力に気づかれるのだけは避けたい。
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