本3 その他CP
□ストイック勉強中
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サカセラ
「堺さんてホント格好良いっスよねー」
ぼんやり頬杖をついて座っていた世良がふとそんな事を言い出すから「あぁ?」と堺の声にも覇気は無かった。
「男らしいし、渋いし、冷静だし、落ち着いてるし」
「急に何言ってんだ、お前」
「俺なんか直ぐ大騒ぎしちゃうし、考えるより先に動いちゃうから失敗も多いし…」
「…まぁ、確かにもう少し落ち着けとか思うけど、まだ若いんだからそれで良いだろ」
「そう言って貰えると多少は気が楽になりますけどー…、だけど俺の場合9年後もこんなんかも知れないし、俺…堺さんみたいに格好良くなれて無い気がするんスよねー…」
「…そりゃお前は…」
…お前なんだし、自分のスタイルで成長してけば良いんじゃ無ぇの?…と続けようとしたが折角のためになる先輩の話も途中に決意も新たにした世良が立ち上がり意気込むので堺が言うはずだった言葉は、はぁ…とため息をついた堺の中に押し込められた。
「俺も堺さんみたいに落ち着いてプレー出来るように勉強するっス」
「………ハァ?」
「取り敢えず、”ストイック”になれるように…」
「……………(何でそこへ行き着いた?)」
「…堺さん」
「何だよ」
「”すといっく”って要するに何なんですかねー?」
「…………(行き着いて無ぇか)」
「あ、携帯で調べよ」
そう言って携帯を取り出して”す・と・い・っ・く”と文字を口に出しながら打ち辞書検索する世良を隣で眺める堺は、やっぱり今時の若者だなぁと思いそれを見ていた。半分以上は呆れと、少しだけ何だか微笑ましいと言うか…馬鹿だよな、何て思ったが不本意ながら密に口元を緩ませた。
「…すといっく…、ストア派??ギリシャ?」
「何を調べてんだ?」
「んーと、俺何を調べようとしてたんでしたっけ?」
「…………あのな」
やれやれとこの何分かの間で何度目になるかわからないため息をつく堺。
携帯と睨めっこして見えたら頭に?マークだらけの世良の携帯を覗き込むように近付いた。
「お前、俺がストイックだとか言ったな」
「え?…あぁ…何となくニュアンスはわかるんスけど…」
「多分俺はそんなんじゃ無ぇぞ」
「へ?」
「ほら、ここに”禁欲的な思想と態度”って書いてある」
「?」
意味がわからないです、とバッチリ顔に出して世良がキョトンとする。そんな世良の肩をぐいっと堺が抱き寄せた。
「さ、ささ堺さん…っ!?」
大きな目を泳がせて、顔を真っ赤にした世良が困惑し、固まる。抱き寄せた世良の肩から緊張を感じて、ガキだなと思いつつそのせいかちょっとだけ意地悪したくなり業と耳元で低めの声色で話す。
「欲情すっから、無理だな」
「…………ッ」
ばっと一瞬でその耳を赤くする世良ににっと不敵な笑みを浮かべる堺。「やっぱり格好良すぎるッ」と肩を抱かれて無かったら、くらりと気絶しそうになる世良だった。
おわり