本3 その他CP

□可愛い!!(断言)
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ガミホタ+丹波+堺





「可愛いーなー」



 相変わらず堀田の家へ上がり込んで、堀田に張り付いて楽しそうにそう言う石神に、堀田は困ったように眉を下げた。



 何度も聞いているが、自分のどこがそう見えるのか石神の視力の心配をしたくなるくらいわからない。視力より思考の心配をした方が良いだろうか、なんて何気に失礼な事を考えているなと堀田は苦笑した。




(………あれ?)




 そういえば…、




「俺が入った頃からそんな事言ってました?」




「だって可愛いし」




「……………」




「あ、でも…最初の頃は普通(?)だったよ」




「そうなんですか?」




「心配しなくても今はすごーく可愛いと思ってるから」




「…いや、心配してるわけじゃ無いんですけどね」







 石神、丹波、堺は同期である。石神、丹波も入団したての頃、当然若いから今よりかは大人しいがフリーダムだった。堺もまだ今より二人の奔放さに諦めて無いのと制御しきれ無いから振り回されては苦労していたがそれもまだ若いから。今も殆ど変わらないその3人の中に一年遅れで入団した堀田が加わる事になる。



 最初は新人の堀田に今と同様に軽ーく石神が話掛けた。




「堺んちで鍋するけど堀田も来る?あ、後丹波も一緒な」




「……あ、はい!ありがとうございます」



 先輩からの誘いに素直に嬉しかったから返事は即答した。何で急に誘われたのか後で聞いてみたが何となく?とへらと笑って石神に答えられた。きっと本当に何となく声掛けたのかもな、と今思えば石神らしくて笑ってしまう。



 そんな事が続く内に石神、丹波が遊んでるかと思うくらい率先して怒らせてはキレそうな堺を堀田が止めるというのが常時となった。なんだかんだ喧嘩しがちだがそれでも一緒に居るとこを見るとやっぱり3人仲良いんだな、と堀田は思う。





「つか、堀田強いなー」



 今日も堺の家で4人で鍋を囲む。まだ皆20代前半の為空けたビールの缶は1ケースにもなろうとしていた。明日はオフだし、を口実にかなり飲んだと思う。皆して割にアルコールに強い。石神も丹波も普段より輪をかけて陽気になるものの基本、酔っても変わらない。堺は自宅でもあるが食事の準備してくれたり片付けたり世話してくれるから、そこまで酔っているのを見た事が無い。申し訳無い気がするが「気にすんな」と慣れた手つきで空いた缶やら皿を持ってキッチンへ行く。それを見ると自分が居なかった内は殆ど一人で熟していたんだろうとわかる。だから後輩である堀田はそう言われつつも洗いものを手伝った。




「大丈夫なのか?さっきまた石神に飲まされてたろ」




「まぁ、これくらいなら…」




「へー、強いな」



 堺にもそう言われ複雑な気持ちで堀田は洗い終えた皿を拭く。そういえば何本飲んだか、石神に渡されては飲んでたから(後輩として断れない)把握していない。




「石神はさ、お前の事可愛いんだよ」




「へ?」




「明らかに態度違うしなー」



 ひょい、と丹波が空いた缶を持って流しへ置く。




「片付けてくれるなんて珍しいじゃ無ぇか」




「だってガミがぽこぽこ堀田に空けちゃうんだもん。おかわり取りに来たついで」




「まだ飲むのかよ」




「これで最後だからー」




「…あ、あの」




 もう止めろ、やだ飲む!なんて子供みたいなやり取りをする堺と丹波に恐る恐る堀田が口を開く。




「明らかにって…そんなに…ですか?」



 堀田からは全くわからないが付き合いの長い二人には明らかにそう見えるらしい。堀田に尋ねられ、二人して顔を見合わせて「うん」とガッツリハッキリ頷ずいた。




「そ、そうですか…」




「つか、絶対好きだって」




「かなり態度に出てるぞ。石神って割とわかりにくいけど、こんなにわかりやすいのも初めてだよな」




「なー」




「………………」




「まぁ、俺も可愛いと思うけど」




「は?え…?…な……?」



 石神の事もだが面前で丹波にもそんな事を言われて堀田がしどろもどろになる。




「堺もそー思うっしょ?」




「お前達と違って真っ当だしな」




「酷ぇの」




 冗談ぽく笑う堺と丹波だったが堀田の思考はそれどころでは無い。つか、どう受け止めて良いのか…。




「ちょ、な…、飲み過ぎじゃ無いっスか」




「えー、ガミに聞いてみる?」




「はい?…ちょ…丹さん!?」



 丹波に押し負けた堺が冷蔵庫から出して冷えたビールを丹波へ渡す。機嫌良さ気に片手にビールを持ち悪戯っぽく笑う丹波はリビングへと楽しげに戻って行く。小学生のようなはしゃぎっぷりに止める間など無かった。




「可愛い」




「な」




「な、って…」



 丹波がどう聞いたのか酔っぱらっているにも関わらず真顔で堀田にキッパリそう石神が答えるから、堀田も言葉に詰まる。つか、それを言うのに躊躇や迷いは無いんだろうか…。









 …無かったんだろうな。



 そんな石神からの「可愛い」の初台詞を思い出していると、石神が不思議そうに声をかけてきて現実に引き戻された堀田はドキっとした。



 その場は何とかごまかしながら、少し考えて…石神を疑うわけじゃ無いが聞いてみる。




「本当に可愛いなんて思いますか?」




「可愛いよ」




「…………」



 以前と同じく真顔で真剣な表情で言われ真剣の使い所が残念な気がするが…。




「あれ?堀田くん顔赤ーい♪」




「…いや、何か…ガミさんの気持ちが嬉しいって言うか…」



 ”可愛い”って言われて嬉しがってる訳じゃ無いですよっ、あ、でも嫌って程嫌でも無いって言うか…あー何かもう変な事言ってますよね…、と慌てて口走る堀田。一瞬目を丸くした石神は次の瞬間には吹き出した。




「も〜可っ愛いーって、堀田〜」



 ぎゅむっと腰にくっついてスリスリ顔を寄せる石神が擽ったい。




 思えば長い付き合いだよな、と改めて思う。



 つい、腰にくっついたままの石神の頭に手が延びて頭を撫でた。



 はた、と見上げて来る石神と目が合う。きっとお決まりの台詞が出て来るだろうと心のどこかで期待する。




「誘ってる?」




「誘ってません」








 今度は堀田が吹き出した。















おわり
 
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