本3 その他CP

□ちゃんと乾かせ!
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サカセラ




「お先っス、堺さんっ」



 いつも元気な世良がそれはそれは元気良くお風呂から出て来た。



 上気した頬と身体と、それに負けず明るい声なのは尊敬もしてる大好きな先輩の堺の家に来られたからだ。普通がどのくらいかと聞かれたら良くわからないが、こうして二人で過ごすのがちょこーっと…少ない気がする。それでも堺から誘ってくれたり、自分から行きたいとゴネてみたりすれば「好きにしろ」とか「あぁ」と不器用そうに答えてもらえるのが嬉しくて仕方ない。


 今日もそんなやり取り後、当然、嬉しいからテンションが高い。そんな後輩に暫く静かだった部屋は再び一気に騒がしくなった。




「って、まだ濡れてんじゃ無ぇか」




「わ、わっ」



 首に掛けてたタオルを取られて髪をわしゃわしゃそれで拭かれる。なんだかんだ世良を叱りつつも、こうして世話をやいてしまう堺に、堺さん優しいっと世良のテンションは益々上がった。




「顔赤いな、のぼせてんじゃ無ぇか?」




「大丈夫っスよー」



 ほわほわ明るく笑う世良に堺は肩を竦めて髪を乾かす。




「結構長いんだからもっとちゃんと乾かせよな」




「乾かすの苦手なんスよねー」




「じゃ短くしろよ」




「ダメっスよ!ちょっとでも大きく見せないとっ!」



 髪くらいでそこまで変わん無ぇよ、と内心ツッコミを入れた堺だが世良にしてみたら無駄だろうが抵抗したいに違い無いのかと口にするのは止めた。




「でも堺さん、俺もそうそう風邪とか引きませんよ。これくらいじゃ…」



 心配し過ぎじゃ無いですか?と見上げて来る世良。




「…………ウルセェよ」




「うー、怒ってます?」



 自己管理ちゃんとしろ、とかプロ意識が足り無ぇとか怒られそうで世良がしゅんとなる。




「………………」




「…何か言って下さいよぅ」




「……………」








 世良が言う通り少しでも大きく見せたいから、くせっ毛なのもあるが普段はセットしてツンツン頭の世良は練習後のシャワー後もだけどお風呂の後だからそのツンツンはどこかへいってしまっている。まだ半乾きの状態だから耳のねちゃった猫みたいなのだ。大きな目がクルクル不安そうに揺れる今は(不安になってるのは堺のせいだが)何て言うか…、




「堺さ〜ん」



 黙ったまま手は止めない堺に世良が情けない声を出す。




(だーーーもう!)




「……ッ…わぁッ、堺さんっ!?」




「…黙れ」




 堪らず堺の表情を伺おうと世良が顔を上げようとしたが、ぎゅむっと抱きしめられて堺の表情は見え無くなってしまった。低い声色でびしっと黙らされてしまったが、抱きしめられてる感じは柔らかいから、怒っては無いよな…と不安ながらも世良もぎゅと堺の服を掴んだ。





 世良の頭の上で不覚にも赤い顔をしている堺。表情がバレ無いように思わず抱きしめてしまったが、付け加えそれも恥ずかしい。




 ナチュラルヘアの世良が何か可愛いから、練習後とか密にヤキモキしてるとか……、内緒だ。




「…ちゃんと髪乾かせ、馬鹿」




「……………はーい…」





 そんな堺には気付かない世良だった。















おわり
 
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