本3 その他CP

□俺ごとにしろ
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サカセラ





「寒ーっ!」



 大袈裟に身体を震わせて世良はベッドから出るのを3秒もしない内に諦めた。




「今日オフだし大丈夫だもん」



 誰に対しての言い訳かそう言うとクルクルと毛布と一緒に丸くなる。



「だもん、じゃ無ぇよ」




 先に起きて喉が渇いたから身体に優しく常温のミネラルウォーターを飲んで寝室へ戻って来た堺が呆れたような怒ってるような口調で世良の横へ座る。




「ほら」



 ぶっきらぼうに世良の目の前に突き出されたのは堺が飲んだ物と同じミネラルウォーターが入ったコップだった。寒さで渋々とゆっくり起きて世良はそれを受け取りごくごくと飲み干す。確か暦の上で所かカレンダー的にも春のはずだが、今年はいつまでも寒いし、現代っ子の世良は(笑)花粉症もあるので喉が渇いてた、というのもあるが、昨日の堺さんもすっごく男前だったなぁとか思い出してそのせいで喉が渇いてたのもあった。コップに口をつければ一気に飲み干してしまい、それからぽーっと堺を見てたら「何だよ」とやはり、怒ってませんかっと言いたくなる口調で言われて「何でも無いっス!」と慌てて返事をした。



 そんな口調の堺だが寝起きに飲み物くれたり何気に横に来てくれたり、最初の頃は怒ってる?と不安になったりもした世良だったが最近やっと堺的に気遣ってくれてるのだとわかり、ついつい「へへ」とにやけてしまう。要するに「身体大丈夫か?」と暗に言われているんだと思うと、堺さん優しいっと世良は嬉しくて仕方ない。



 そんな有頂天な世良に冷静な堺の言葉が下りてくる。




「いい加減起きろ」




「えー、堺さん。まだ6時半ですよ〜」




 堺にしてみれば遅いのか、起きるように促され毛布を引っ張られたが世良はまたクルクルと丸くなった。




「お前…オフだからってなぁ」




「オフだから、ゆっくりしましょうよ」



 頑なに毛布に包まり出て来る気配が無い世良に堺がはぁ、とため息をつく。



 何度か毛布を引っ張ったが顔まですっぽり入ってしまい世良は出て来ない。




「こら、世ー良ぁ!」



 そんな事をやってる内に動いて身体はすっかり暖かくなった堺が手を止めるとひょこと世良が顔を出した。



 ちょっと不安そうな表情をしたが堺を見て怒ってる風では無いとわかるとほっとしてふにゃと顔を緩ませた。



 そんな顔をされたら一言くらい説教もしてやろうと思った堺もその気は無くなった。ふぅと肩を竦めて暫く考えて、その間に再びしゅーんと眉を下げる世良に可愛いとか頭に過ぎらせのは何だか悔しいから言わないが、隙をついて世良包まる毛布を取っ払った。




「…っわ!寒ッ…つか寒ーッ」



 ヒヤリとした空気に二回も同じ言葉を繰り返し世良が一人で大騒ぎしてると取り払った毛布を被った堺が覆い被さって来てピタリと世良が大人しくなり大っきな目を益々大きくした。




「さ、堺さ…っ」




「でかい目だな」



 呆れながらも降参したように笑う堺が何だか優しい表情だったから、心底卒倒しそうっスなんてクラリとし世良はかぁ、と顔どころか耳まで赤くした。




「つーかお前服着て無ぇから寒いんだろ」



 上はTシャツ下はトランクスのままの世良に堺が益々呆れた口調になる。




「だってぇー」




「だってじゃ無ぇよ、風邪引くだろ」



 とは言いつつも剥いだのば自分だったか…と何となく堺も強くは言え無かった。つか、何だ?着せるとこまでしないといけないのか?と軽く頭を抱えた。




「堺さんベッドから出てたのに暖かいっスすねー」



 ぽわぽわ呑気な声で下から世良がしがみついてきて、そりゃお前と毛布の取り合い(?)してたからだろうが、と…はぁと堺は再び深いため息をついた。




「何スか?」




「…何でも無ぇよ」




「…ていうか、堺さん」




「あ?」




「…えーと…、起きるんじゃ…無かったんスか?」



 恐る恐るになりながら、上で毛布ごと覆い被さる堺を見上げる世良。




「…寒いんだろ?」




「へ?」



 予想してない堺の台詞に世良がキョトンとする。




「俺ごと被っとけ」




「………………っ」






 オフだからって…




 でもオフだから




 こうしてのんびりするのもたまには良いか、と堺もベッドへ体重を預けた。




「つか、お前も十分温かいけど?」




「堺さんのせいっスよ…俺、もー顔赤いの戻んなくなったらどーすんスか〜」




「……何だそれ」




 何やらツボに入ったのか珍しく吹き出して笑う堺を目の前にして、その表情は世良にとても新鮮だった。マジで顔赤いの戻んねーかも…なんて思いつつ、こうして堺と過ごせる時間を贅沢だなぁと顔を緩ませた。






 








おわり
 
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