本3 その他CP

□当然、俺だろ
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 練習後、城西に後輩として夕食をご馳走になった三雲は帰り道、ふぅと大きく一呼吸した。



 城西や他の先輩と夕食をするのもたまにはある。後輩として、先輩の話が聞けるのも勉強になるが、その相手が城西だと異様に気疲れするのだ。



 お世辞で無く城西の話は本当に勉強になる。ただ熱心というか…真面目で優等生な城西らしいというか…熱いというか…熱苦しい…かな…少し…。長いし…。



 そんなこんなで勉強になったが(しつこくフォロー)、疲れて帰宅した三雲。風呂へゆっくり浸かり身体が温かいうちにベッドへと横になるとトロンと睡魔に襲われる。




(そういえば持田さんと食事とか行った事無いな…)




 練習中、監督と話す持田を見かけたものの話どころか、挨拶すら出来ないうちにグラウンドから居なくなってた持田の事を思い出して、どこへぶつけるでも無い寂しさにぎゅうと被っていた毛布を三雲は抱きしめた。










「何とか今日は起きてるな」




「…っ…ちださん!?」



 だから、知らない間に家へ上がり込むの止めて下さい…。正直、怖い…と思った自分が正常なんだと思いたい。



 キッチンからミネラルウォーターのペットボトルを片手に現れた持田に何だか怖くなった。(とはいえ持田が来るのを見越してミネラルウォーターは常備。まぁ自分も飲むし)




 目で何で居るんですか?と訴える三雲を見てどうやらそれは伝わったらしく最初に一言発して以来、何故だかずっと黙ったままの持田が口を開く。




「病院からこっちのが家近いし?明日も朝イチで行くからな。まぁ、お前は迷惑だろうけど」




「いや、迷惑なんて…」



 珍しく愁傷な持田の台詞に三雲が手を振り恐縮すると「ふぅん」と素っ気ない返事が返ってくる。




「…………?」




 それからも何故か黙ったまま持田が自分をじっと見てくるから何なんだろう、と三雲が顔を顰める。




「………あの…?」




 機嫌が悪そうに見えた。



 さっきは普通に話かけてきたはずだったのに…。



 俺、何かしたか?



 …………………。




 暫く考えてみたが思いあたる節は無い。



 ともかくもう一度真剣に考えてみようとした所で、ぐいっと防衛の心境が表れてたのか抱きしめてた毛布を取られる。



 部屋の空気に晒された身体はヒヤリとしたが、それ以上にバンっと顔の横へ勢い良く下ろされた持田の手にもヒヤリとさせられる。




「…なぁ」




「は、はい」



 低い声色にびくっと肩が震えた。




「抱き着くなら俺と毛布とどっちが良い?」




 ………………。




「…………は?」




 何を聞かれたのか…、持田の言葉を頭の中で三雲は繰り返した。




 ………………。




 えーっと?




 何と、何?




 あぁ、持田さんと毛布。




 持田さんと、




 毛布?





 ……………んー??




「長げーよ、馬鹿」




 コンっと持田に額を人差し指で突かれた。痛いです…と三雲は口には出さないが額に手を当てて、スミマセンっと慌てて謝る。




「当然、俺だろ」



 微塵も揺るぎ無く自信満々に自分に親指を向ける持田に、未だに選択の意図はわからないがハイと即答するとニッと持田が笑う。



 満足そうに笑う持田はどこか子供みたいに見えた。




「じゃ俺に抱き着いとけよ」



 ゴロンと隣へ転がる持田に身体を引き寄せられる。驚いて硬直する三雲だったが「嫌なのかよ」と拗ねたような声が耳に かかり背を軽く叩かれ、半ば不安気に持田へ腕をまわす。



 急かしておいて三雲の行動に今度は持田がピタリと動きを止める。




「…三雲」




「何…ですか?」




「シたくなった」




「…な、……あッ」



 ぐるっと三雲は手首を掴まれて、真上の持田を見上げた。



 口角を上げる持田はさっきと同じように自信満々で余裕めいていた。





 私生活でもピッチでも、持田について行ける日が来るのはいつだろうか…。







 想像出来ない…。















おわり
 
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