本3 その他CP
□言葉にしなくてもわかるけど、やっぱり言葉も欲しくなる
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ガミホタ
練習が終わりロッカー室。ソファーに座り小首を傾げたまま石神はぼーっとしていた。
目は開いてるので寝てはいないだろうが、とにかく微動だにしない。
端から見たらいつも通りのマイペースといえばそうなのだが、堀田はどうも何か違う気がして心配というか、…とにかく石神が輪をかけて変な気がして顔を顰めて声をかける。
「どうしたんですか?ガミさん」
「んー…」
話しかけた堀田も見ず石神の視線はふわふわと空中だった。
疲れでも溜まってるんだろうか?顔色を確かめるように堀田が顔を近づけるとぱちとやっと目が合い、距離が近過ぎたかと堀田がはっと焦ったが、へらといつも通り軽そうに笑う石神は堀田の心配顔にただ「ヘーキ」と一言言うと堀田から離れ着替えをはじめた。
「……………」
普段の石神なら今の隙をついて手なり口なり出して来るところだがそれが無くて何だか気になる。いや、出して欲しいわけじゃ無いけど…と心の中で思いながら堀田も着替えはじめた。
着替えが終わった後も石神が調子良く自分に懐いて来る気配は無かった。いつもそういうわけじゃ無いしまだメンバーもぼちぼち残ってる。気にし過ぎかと堀田は肩を竦めた。
そんな事を考えているうちにポンと肩を叩かれ「お疲れ〜」と片手を上げて帰宅する石神の背中を見送る堀田だった。
そんな日が続いて一週間。
「………………」
何かおかしい。
やはり石神があれからずっとそんな調子なのが堀田は気になった。
ただ端からは全くいつもの石神だった。今も練習は普段通り(だと思う)。普段が変だと(←失礼)わかりにくいのか…と、隣にいた椿に尋ねてみる。
「…椿。何かガミさん変じゃ無いか?」
「え?そうスか?」
首を傾げる椿にやっぱり気のせいだろうか、と思えてくる。背後にいた丹波も加わって、肩をがしっと掴まれ「いつもの事だろー」と明るく笑われ堀田は結局良くわからないままその日も終えた。
更に一週間が過ぎる。
変だ。
つか、何が変だって石神が何もして来ない。触ってこないし、抱きしめてこないし、キスもしてこない。
新しい作戦だろうか、いやそういう事するタイプじゃ無いか。
(…さすがに…ちょっと…少し…)
何だかもやもやしたまま、ふと石神と目が合う。目が合った石神は相変わらずへらとこっちの気が抜けそうな笑いを浮かべてきたから、もう何なのかわけがわからず石神相手とはいえやんわり聞くはずだった事は口からはズバッと言葉が出た。
「ガミさん。変ですよ」
「えー?そうか?」
態度もだが返事も軽〜く返ってきて堀田は続ける言葉が思いつかず困惑した。
「堀田んち久しぶりだな〜」
自分から家へ来るように誘った事なんて今まで無かったかも知れない。石神を家へと連れてきて聞きにくかった事を尋ねた。
「ガミさん、やっぱり変ですよ」
「んー…?」
「何か悩んでます?」
石神が悩むとかまるで結び付かないが聞かずにはいられなかった。石神からは今だに返答は無く「んー」と曖昧な返事をするばかりだった。
「…俺が…何かしました?」
堀田の声のトーンが落ちる。話を聞いてるのか疑いたくなるような曖昧な返事をする石神もそれには直ぐ否定した。
「違う」
「じゃあ、…その…何で…」
何で
何もして来ないんですか?
(………………)
違う!
それじゃあ何かして欲しいみたいじゃないか…。
「……………」
結局口を開いては黙って…を繰り返す堀田に漸く石神が一言。
「堀田。俺の事好き?」
「……………は?」
石神からの唐突な一言に、堀田はそれ程大きくは無い目を丸くしてア然とした。じっと自分を見て答えを待つ石神を見返して何で急にそんな事を聞いてきたのか戸惑う。
確かにそんなに好きが態度に出る方では無いし言葉も少ない…と思う。石神の性格上そんな事気にし無いだろうと少なからず思ってたし、石神も自分の気持ちなんて言わなくてもわかってる…とか甘えてたのもある。それで悩んでたのか…?
……………二週間も!?
「二週間?」
堀田が二週間も石神がおかしかったのを告げると、当人の石神が驚いた。
「てっきり三日くらいかと思ってたけどな〜」
ぼーっとし過ぎで時間の感覚もおかしかったらしい石神は随分な勘違いにも関わらず気楽に笑っていた。
「さっき”久しぶり”って自分で言ったじゃ無いですか…」
「三日は”久しぶり”じゃ無ぇの?」
「……じゃ無いと思います」
「そーか」
「……聞いてくれれば良いじゃないスか…」
「……ん、何か…聞けなくてさ」
堀田が無理に付き合ってるとかだったらどうしようか、とか考えちゃって…と横を向く石神は少し拗ねてるような寂しそうな表情だった。
「……らしく無いですよ」
「…………だな」
口元を緩める石神の表情は相変わらずだったけど、やっぱり言うべき事は言わないと駄目なんだな、と堀田は内心反省した。
「……本当、らしく無いです」
「…うん」
「…ガミさんは…そんな事気にしないで…ー」
「……っ……堀…」
「…一緒に…居てください」
顔どころか耳まで赤い堀田は、それこそ二週間もの反動か目を潤ませて石神を見返した。ぎゅと服を掴かんでくるが恥ずかしいのか裾を少しだけしか掴んで無いのが何かもう可愛い過ぎて…思わず力一杯抱きしめた。
「…ちょ…痛いっス…ガミさ…」
「悪ぃ。…あー、でもこうすんの久しぶり…」
「ガミさんが…何にもしてこないなんて変な感じでしたよ」
「…へー」
「…んっ」
ちゅと軽く口付けされて離れた石神の唇は首筋へと降りる。
「…堀田…寂しかった?」
「…っ…あ、…え…」
「わかってるけど♪…聞きたい」
「…ぁ、…んっ」
わかってる…って、そんな石神の台詞に呆れつつも久しぶりに石神に触れられるところがあちこち熱を持ちはじめ溶けそうになる。
「…堀田」
「………っ…」
熱っぽく見つめられてドキリと心臓が跳ねた。
すっかりいつもの石神はニヤリと笑う。
魔力でもあるんだろうか…。
「…っ………さ…」
堀田が言葉を告げるまで後数秒…。
おわり