本3 その他CP

□誤解と嫉妬に巻き込まれ…ハッキリ言って余所でやれ!
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ガミホタ+サカセラ





「………………」




「………………」




「…な、何すか…この状況…」




「…すまん、世良…」



 まだまだ残暑厳しい練習中、といっても今は休憩時間になりメンバー達は僅かな休息に身体を休めている。



 自分も休むべく日陰を求めて歩いていた世良は、何故か睨み合う石神と堺を目撃しわけがわからない。



 同期同士で何か喧嘩かな、石神にしろ堺にしろそんなに喧嘩っ早いタイプじゃ無いし何でこんな事になってるのか珍しい…けど何か異様に恐いっ、と世良は渦中でも無いのに二人の間で一人オロオロしていた。



 そんな世良に複雑な表情で謝ってきたのは堀田だった。はぁ…と状況が全く掴めず気の抜けた返事をした世良は、はたと堀田を見て思わず大声を上げた。




「堀田さん!何で堺さんに抱き着いてるんすか!!」




「ばっ…違う!抱き着いてはいないだろ!」



 ちょっと…少し………がっつり…あくまでもユニホームを掴んでいるだけだ、と何だか頼り無い言い訳をする堀田に世良も複雑な表情になる。




「だから…何でですか?」




「…いや、えっと…」



 ずいっと真顔で下手をすれば試合中以上の気迫で質問してくる世良に堀田は言葉を詰まらせる。



 しかし、歯切れが悪いとこういう場合更に事態を悪化させるばかりだ。




「まさか堺さんと堀田さん……」




「違うって!」




「じゃ何でなんすかっ!」




「だ、だから…それは…」



 堂々巡りである。










〜何でこうなっちゃったんだ?別に堺×堀田じゃ無いですよ。エピソード1〜



 ブゥン!  




「…………ッ」



 今日も何故か自分に目掛けて飛んで来てる(としか思え無い)蝉にビクッとした堀田。情けないかも知れ無いが苦手なものは苦手なので仕方無い。




「また蝉か」




「す、すみません」



 気がつくと声の主のユニホームの裾を掴んでいた堀田は慌ててその手を離した。呆れた口調で、謝る堀田に声をかけたのは、今日一緒に組んでいた堺。バタバタとそれこそ最期の一飛びかも知れない蝉を椿のように捕まえたりは出来ないが手際良く追い払う。




「良いから、ほらさっさと練習戻るぞ」




「…はい」



 厳しい物言いをする堺だが先輩として本当に堺は頼りになるし堀田は尊敬している。蝉の事はともかく相談事をするなら石神より堺にする事の方が多いかも知れ無い。今は少し減ってしまったが丹波、石神、堺、堀田と良く飲みに行ったりもしていた。年がそれ程変わら無いとはいえ堺にしても堀田は世良や椿とかと同じく可愛い後輩の一人なので、ベテランと呼ばれる一員になった今でもつい面倒をみてしまう。




「………………」



 互いに他意は無いのだが端から見ていた石神は少し面白く無かったようだ。










〜狙われてる!?とかうっかり勘違いしそうな位何かしらが飛んで来る日があります。ーだから堺×堀田では無いですってば、エピソード2〜



 石神も他の事ならいつも通り飄々と軽〜い感じで特に気になどしないのだが、昔からの付き合いで堀田が(※あくまでも後輩として)堺を慕っているのを知ってるから、何だか気になる。



 つい、ぼんやりしてると今日一緒に組んでいた赤崎から声がかかる。




「何ぼーっとしてんスか、ガミさん!」




「あ、ああ。悪ぃ」




 後輩とは思えない口調で赤崎から急かされ気を取り直して石神がボールを蹴ろうとしたその瞬間、




 ブゥン!




「!」



 一瞬だったので目の前を凄い勢いで通過した黒いような緑だったような物体が何なのかわからなかったが、自分を通り過ぎソレは堀田へと飛んで行く。




「…………!!」



 さすがにサッカー選手だけあり反射神経は良い。堀田はソレをばっと避ける。




「…って、おい」




「…あ、すみませんっ」



 避けたものの、ついまた堺へとしがみつく堀田。




「カナブンも駄目なのか」




「…虫は…ちょっと」



 何処かへ飛んで行ったカナブンが確実にいないのを確認して恐る恐る堺から堀田は手を離した。










〜三回目ともなるとさすがにね。くどいようだけど堺×堀田じゃ無いんだってば!エピソード3〜




「気になる」




「…何がですか?」




 いつの間にか堀田の横に練習場所を変えていた石神に、唐突にそんな事を言われ堀田は首を傾げた。




「隣にいるからな」




「…?…はあ…」



 石神の心境は堀田には伝わっていない。良くわから無いな、とぼんやり返事を返してもうさすがに何も飛んで来ないだろうと、そう願いたい堀田だったがそんな堀田の気持ちなど石神の心境がわかってない堀田同様、虫が知るよしは無い。




「………っわ!」



 今度はスーッと音も無く自分の目の前にトンボが飛んで来て、思わず堀田は声を上げてしまった。




「…トンボもか」



 自分の背後へと回りユニホームを掴む堀田に、はぁとため息をつく。



 大きな声を上げてしまい口を押さえてコクと頷く堀田は小さくすみませんと返事をした。




「…堀田ぁ」




「…あ」



 珍しく怒った風な石神に堀田はハッとする。




「何で堺なんだよ」




「あ、いや…わかんないです…」




 無意識のうちに、堀田が掴んでしまったのは石神では無く堺だった。本当に何でだか良くわからなくて掴んだ本人なのに一番動揺していた。










 そんなわけで冒頭へ至る。



 特に言い合いするわけでも無くじっと互いを睨み合う石神と堺に堀田も声をかけ辛い。



 そうしてるうちに休憩時間になるわ世良が横で返答を迫ってくるわ、で堀田は複雑な心境で困惑していた。



 しかし、こうも続くと虫に対して過敏になってしまい駄目だと思いながらも堺から手を離せない。



 ブゥゥン!!




「………!」



 二度ある事は三度ある…ってまさかの四回目の虫(再び蝉)の襲来に堀田は掴んでる堺に力を込めてしまう。



 端から見たらぎゅうと抱き着いてるようにしか見えないから石神と世良が声を上げる。




「堀田ぁっ」 




「堀田さんっ」




「だーー!もう!」



 堀田の虫嫌いは仕方無ぇな、と大人しく盾になってた堺だが何やらややこしくなって来てついにキレる。



 ぐると堀田へ向くと自分より上背のある堀田にだが、ユニホームの首根っこを掴み猫掴みのように持つとぐいっと石神へ押しやった。




「余所でやれ」



 一言そう言うと、騒ぐ世良も同様に猫掴みのようにして持ち連れて行ってしまった。










「……………」



 残された石神と堀田はぽかんとその場で立ちすくんでいた。



 はた、と互いに目が合う。




「…………すみません」



 堀田がぽつりとそう呟いた。



 しゅんと叱られた猫みたいなので石神もらしく無いな、と自分を反省した。




「……………わかってはいるんだけどな…」



 堀田へと向き直りくしゃと頭を掻いて、石神は手を伸ばして堀田の後頭部を掴み自分の肩へと堀田の額を押し付けた。




「今日はお前の事目茶苦茶独り占めしたい」



 耳元でそんな事を囁かれ顔を赤くする堀田だった。










(ジーノと椿が伝染してる…)



 ぶっちゃけ他人の事等言えないが遠巻きからそんな二人を目撃してしまった達海は、まぁ仲良いなら良いか、…良いか?と半分疑問に思いながら正に他人事のように…つか他人事としてとりあえず見守っておいた。















おわり
 
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