本3 その他CP

□ETU蝉騒動
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ガミホタメイン キャラ多





「う…わッ」



 暑ーい夏の盛りの練習の中、休憩時間になり建物やら木陰やらへ身体を休めに行くメンバー達。



 そんな中、珍しく声を上げてしまい顔を赤くしたのは堀田。周りにはとりあえず石神しか居ないのを確認して少し安堵した。




「どうした?」



 本当に堀田が声を上げるなんて珍しいから、不思議そうに石神が尋ねてくる。心配と、あと悪いと思いながらも声を上げる程の原因が何なのか好奇心も手伝った。




「いや……」



 口を押さえたまま言いにくそうな堀田に石神が小首を傾げると、それと同時くらいに堀田の足元でジジッと音がしてまたビクッと堀田の肩が動いた。




「ああ」



 それを見て石神が漸く納得した。口を押さえたまま目を逸らす堀田はもの凄くしまった、という顔をしてまた少し頬が赤いから、その表情が新鮮で、可愛いな〜とかつい言ってしまいそうだったが代わりに別の言葉にした。




「苦手なのか?」



 知られたくなかったのか黙って小さく頷く堀田はやっぱり可愛いな、と石神が「へー」と口元を緩ませた。




「この位の時期になるとあちこちで転がってんのを見かけますよね…」




「あー、確かにな」




「死んでるかと思ってたんですけど…動いたんで…」




「そりゃビックリするな」



 うんうんと相槌をうつ石神を見て、本当にそう思ってますか?とツッコミたくなる軽ーい適当な態度だったがいつもの事なのでさらりと流して、はぁとため息をついて堀田が休憩をとるのに歩きはじめる。






 ジジッ!






「………ッ!!」




「あ」



 背中に軽く衝撃を感じた堀田を襲ったのは更なる災難。




「はい」




 …かと思いきや、



 身体を強張らす堀田を知ってか知らずか、背中についたその物体をひょいとあっさり手で捕まえて取り除いたのは、たまたま横を通りかかった椿だった。




「あ、ありがと…椿」




「いえ…っわ!」




「椿ーっ!!」



 勿論、椿はただの親切で取っただけだがガシッと石神に肩を掴まれびくっとなる。




「ここは俺が取ってやって堀田にお礼されるトコだろ!?」




「へ…?あ?…す、すみません??」



 
「な、何言ってんですか、ガミさん」




「いや、言葉は良いからキスしてくれ!」




「暑さで脳がやっつけられてるんですか」




「怖かったv(←1オクターブ高い声で)って抱き着いて来てくれても構わない!」




「構わない…じゃ無いです!本当に大丈夫ですか」




「大丈夫!正気だ。な、椿」




「へ?…あ?…うーん?、良くわかりませんが、…何かスミマセンっ」




「バッキーは普段オドオドしてるのに意外とこういう事は逞しいよねぇ」



 三人が大騒ぎする中、ジーノも通りかかる。同じように練習してたはずなのに世界が違うくらい爽やかだ。



 そして、田舎で子供の時良く捕まえましたからと笑う椿が今だに手に持つソレを一瞥した。



 ジジッとまだ動く。



 椿が手に持つのは今更だが蝉だ。




「バッキー、ソレ早く何処かに捨てておいで」



 言われて椿がはっとなる。




「王子も苦手ですか?」




「苦手って言うか…騒がしいからね。嫌いかな」



 ハッキリとそうジーノが言い終えるとバッチリ飼い馴らされてるとしか思えない忠犬ぶりで椿が木陰へと蝉を放しに走って行った。




「僕も…ってどういう事かな?」



 くすりとジーノが笑う。振られた石神は「あー」と歯切れ悪く返事をした。




「だーー!!蝉は嫌だー!」




「五月蝿ぇな!ちょっと飛んできた位で騒いでんじゃ無ぇよ!」




「ちょっとセリー。蝉に負けず劣らず騒がしいよ」



 呆れた口調でジーノが自分に飛んできたらしい蝉に混乱気味の世良にそう言う。先輩である堺を盾にするように蝉から逃げてたようだが、既に蝉は何処へやら行ってしまったようだった。




「だって!王子〜。蝉がバァーって飛んで来てワーってジーってダーって!!」




「…サック、何語かな?」




「…知ら無ぇよ。つか、そんな蝉を毛嫌いすんな。中国じゃ結構、重宝されてるらしいぞ」




「俺、中国人じゃ無いから良いっす」



 堺が宥めるようにそう言ったが、嫌いなものは嫌い。世良はふいとそっぽを向いた。そこへ更にジーノが続けた。




「蝉の一生に肖って再生と復活の象徴とされてたり、ほら蝉って死んだ時も羽を揃えてきちんとしてるからその姿が乱れず整然としてるって事で翡翠なんかを蝉の形にして、死者へもそうあって欲しいって願いを込めて贈るらしいよ」




「へー」



 一同関心。




「口に入れるらしいけど」




「でえぇっ!蝉をっすか!?」




「翡翠とか玉のね」




「本物じゃ無くても嫌っすよ〜」



 世良が半泣きで怪訝そうな顔をする。当然、同じように話を聞いていた堀田も密に嫌そうな顔をしていた。そして、堺の追い撃ちの台詞。




「三国時代じゃバーベキューしてたみたいだけどな。抜け殻とか羽を漢方にするとか」




「蝉食べるんすか!?そんな堺さんとはキス出来ませんっ」




「馬鹿言ってんじゃ無ぇよ。俺が食べるなんて言って無ぇだろが。馬鹿!」




「健康に良いって言われたら食べそうですもんっ」



 ↑確かに。
(全員一致の心の声)




「…………食わ無ぇよ。馬鹿」




「何すか、今の間!やっぱ健康の為に食べてるんだ!?」




「…話聞けよ。大馬鹿」




「つか、堺さ〜んっ。馬鹿馬鹿言わないで下さいよ〜」




 ちょっと勉強になったが、その反動なのか噛み合わない会話で(つか、世良が一方的に)騒いでいると、どかどかと黒田が歩いて来た。隣には杉江。




「だーー!五月蝿ェな!蝉くらいでギャーギャー騒いでんじゃねぇよ!」




(…そういうクロも苦手なくせに…)



 ↑心に留めるのが杉江の優しさ。



 けたたましいとしか言いようが無い蝉の鳴き声の中、張り合うように大騒ぎな休憩時間。堀田の背を石神がぽんっと叩いた。




「まぁ、結構苦手な奴多いし、気にすんな」




「はぁ…。…………ッ!」




 騒ぎも一段落しようとした頃、再びバタバタと大きな音を立てて、こっちを怖がらすのが目的じゃないかと思える勢いで蝉が飛んで来た。




「わー!!また飛んで来たー!」




「ギャーー!!」



 世良と黒田の叫びがシンクロする。






「えい!」






 !?







「…捕まえました」



 飛んできた蝉を手で捕まえるという荒業をやってのけたのは、さっき蝉を放しに行って戻って来た椿。そう言うと再び捕まえた蝉を木陰へ蝉を放しに行こうとしたが、椿の猟犬ぶり(?)にジーノがご褒美に頭を撫でているのでちょっぴりタイミングは逃した。




「ほんっと意外と逞しいよね、バッキー」




「…そ…スか?」




「動物的に何か凄ぇな、椿…」




「お前がビビリ過ぎ何だよ、世良!」




(そう言うクロも十分ビビってたけどな)




 休憩時間なのに何だか休まら無いなとげんなりと堺が口を開く。




「ほら見ろ」




「夏木は子供にって蝉集めてるし、丹波は蝉に紐付けて遊んでるぞ」




「子供か!」



 …ツッコミが響いた。







 一方クラブハウス内。




「達海…。蝉相手にさすがに殺虫剤はえげつないだろ」



 こちらも同様に蝉に大騒ぎ。達海が口を尖らせた。




「だって怖ぇーんだもん」




「…容赦無いな。有里ちゃん見て見ろ」




 つい、と後方を後藤が指差す。言われるがまま振り返った達海は見なきゃ良かった、と後悔の表情。




「何で今年はこんなに蝉が飛んで来るのよーっ!」



 叫びながらも虫取り網とカゴを抱えて果敢に蝉を捕獲する有里の姿を視界に入れた。




「…あいつも逞しいね」




 麦藁帽子を被り完全に虫取り少年にしか見えない(←とか言ったら怒るだろう)有里に達海と後藤は苦笑した。




 そんなこんなで休憩になってるんだか良くわからない状況だったが何だかんだでそれぞれ身体を休めた。







 クラブハウスを背もたれにして休む堀田の横へ石神もストンと座った。




「…呆れました?」



 気にしちゃうタイプなのか、A型だしな(←偏見)。可愛いなー。とか堀田のバツの悪そうな表情に石神がそんな事を考えながら返事を返す。




「んー?そんな事無ぇよ」




 ぽふと堀田の頭へ手を置いた。




「飛んで来たらちゃんと追い払ってやるからな」




「……………どーも」




 あ、素直…。堀田の返事に緩む口と調子に乗る感情は石神は抑えない。




「お礼は言葉じゃ無くてキスで良いから。つか、じゃなきゃ嫌だ」 




「…嫌だって……」



 どんな我が儘ですか、と苦笑する堀田。




 お礼はともかく、蝉が飛んで来ないと良いな、とため息をついた。















おわり
 
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